飲食店はフードバンクへの食品提供がしやすくなる? 政府「食品ロス削減推進法」改正を検討
ここ数年で注目が高まってきている「食品ロス」。まだ食べられる食品の廃棄を減らすために、自民党の環境・温暖化対策調査会における「食品ロス削減プロジェクトチーム」は今年4月、食品ロス削減推進法の見直しに関わる提言を岸田総理に申し入れている。このような動きもあり、政府は「食品ロス削減推進法(食品ロスの削減の推進に関する法律)」などの食品ロス関連法について、来年の通常国会での法改正を目指すと見られている。今回は、検討されている法改正のポイントについて解説する。
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食品ロス削減推進法施行の背景と現状
食品ロス削減推進法は、2019年10月1日に施行された。その背景としては、2015年に国連総会において「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、2030年までに食品ロスを半分に減らすという目標が定められたことが挙げられる。
しかし、食品ロス削減推進法が施行されても、大幅な食品廃棄量の削減には至っていないのが現状だ。こうしたことから、より取り組みを進めやすくするための新たなルール作りが求められるようになり、食品ロス削減推進法を改正する動きにつながってきた。
フードバンク提供後の食中毒発生などについて免責条件を設定
今回の改正のポイントは二つ。一つは、フードバンクで食中毒などの事故が起きた場合でも、食品を提供した事業者に対し、一定の条件下であれば責任を問わないとするもの。ちなみにフードバンクとは、品質に問題のない飲食店の余剰食品、食品企業で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する団体・活動のことで、食品ロス削減において大きな役割を果たしている。
これまでは、事業者が提供した食品で食中毒などが起こった場合、損害賠償訴訟になってしまう可能性もあり、事業者からフードバンクへの寄付が進まない要因となっていた。法改正では、フードバンクの公的な認証制度を作り、認証済みのフードバンクに寄付した場合は責任が免除されるようになると見られる。
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「持ち帰り」は消費者自らの責任で
もう一つは、飲食店などで食べきれなかった食品を消費者が持ち帰り、万が一食中毒などが起こった場合に、飲食店の責任が免除されるようなルールを整備すること。現状では明確なルールが存在しないため、客側の責任で持ち帰った場合であっても、飲食店側に一切責任が発生しないとは断定できない。今回の法改正では、消費者自らの責任において持ち帰るというルールを作ることで、持ち帰りの環境整備を目指し、食品ロスの削減につなげたい考えだ。
食料安全保障と気候変動の観点からも、食品ロスは世界的な課題である。食べ残しの持ち帰りを推進する動きは、国内の飲食店でもより顕著になっていくだろう。今後の食品ロス削減推進法改正の動向に注目したい。