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おでん居酒屋『ゑぶり場亭”』、2か月先まで予約で埋まる理由【連載:居酒屋の輪】

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樹齢1000年以上の屋久杉をカウンターにするなど内装も上質な設え

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楽コーポレーションで培った感動を生み出すサービス精神

お客さんの感動を生み出すために利益を度外視したサービスを行うのは、前回登場『二五三◯(ニコミマル)』の黒川圭太さんと同様の手法だ。二人の関係性は長く、小木さんが18歳のときにアルバイトをしていた人気居酒屋『まんま屋 汁べゑ』から15年以上も続いている。

「初めての飲食業界が1日300人以上も来店するお店だったので本当に大変でした。例えば開店前に料理の仕込みをしながら、70〜80人前ぐらいのファーストドリンクの準備をするんですが、不慣れな僕では難しく……それを難なくこなす先輩たちは、キラキラ輝いて見えるくらいカッコよかったです。化け物じみているようにも感じていましたが(笑)。僕は1年ほどアルバイトを続けても一番下っぱ。怒られない日なんて1日もなかったと思います」

18歳から31歳までの約13年間。楽コーポレーションでの経験が今の成功につながる

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「それから大学を辞めてほかのアルバイトもしたのですが、どんな職場でも想定以上に通用してしまって。『まんま屋 汁べゑ』が特別な環境だったというか、本当にスター選手ばかりで、実際に当時のメンバーのほとんどが独立して飲食業界で今も活躍しています」

ほかの仕事環境では段々と物足りなくなった小木さんは『まんま屋 汁べゑ』に出戻り、そのまま運営元の楽コーポレーションに就職。24歳のときに恵比寿『サカバ ゑびす堂』の店長を任された際には、30か月以上も前年比の売上を更新し続け、月商1,000万円を超える繁盛店へと押し上げた。

調理技術は楽コーポレーションの跡継ぎのひとり宇野広大さんから直々に学んだという

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「恵比寿『サカバ ゑびす堂』では僕の前の店長だった黒川さんをはじめ、諸先輩方が築いてきた土台を引き継いだからこそ売上を伸ばすことができました。提供する料理も宇野広大さんから受け継いだレシピを守り続けたのが良かったのだと思います」と話す小木さん。何よりも大切にしたというのが先人の教え。その上で新しいサービスを考えるために実施したのがオープン前のミーティングだ。

「毎日20分ほど、テーマパークで接客が良かった、映画をみて泣いたなど、日常の中で得られた感動をスタッフ全員で共有し、その感動をどうすれば居酒屋で再現できるかを考え続けたんです」という。ちょっとした気の利く一言など、小さな感動がリピーターを生み、それがめぐって商売繁盛につながるという訳だ。

そうした経験を経て蓄積した感動を生み出す工夫は、細やかな接客だけでなく『ゑぶり場亭”』で提供される料理にも活かされている。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。