飲食店ドットコムのサービス

おでん居酒屋『ゑぶり場亭”』、2か月先まで予約で埋まる理由【連載:居酒屋の輪】

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

コロナ禍で時間を持て余した小木さんは漢字を自作。24時間居酒屋のことを考えているという

画像を見る

スタッフたちの教育に力を注ぎながら乗り越えたコロナ禍

東京都の町田市出身ながら、楽コーポレーションが出店していなかった横浜を独立先に決めたという小木さん。2018年、オープニングスタッフもあえて飲食未経験者ばかりを集め、ゼロから仕事を教えてきたという。

周辺の居酒屋の価格帯にも合わせることはせず「24坪の広さ、客単価5,000〜6,000円だからできるクオリティの高さで勝負」するといった戦略が功を奏し、2020年4月の1度目となる緊急事態宣言が発令される頃には、すでに月商は1,000万円を超えていた。

「緊急事態宣言の期間中など営業をできない日が続く中、うちの会社ではスタッフ全員にシフト通りの給料を支払うことにしました。結果的に、貯金が1桁になるほど経営が危ういときもありましたが、やはりスタッフがいてこそのお店ですから。そうこうするうちに社員希望が4人も集まって。その活躍の場として2020年には2号店『ヨコハマ笑店 ゑぶり亭”』もオープンすることになったんです」

コロナ禍の経営危機を乗り越えた現在の経営状態はというと「1店舗目は月商1,000万円まで回復していますが、今は社員旅行のために休日を増やしたので、営業が少ない月だと700万円を超えるぐらいのときもあります。2店舗目も波があり17坪で月商600〜800万円ほど。営業日を増やすだけで売上は伸びますが、やっぱり人を育てることが一番。これまでの居酒屋人生で学んだ最も大切なことです」と売上を伸ばすことよりも人材育成の方が大切だと語る。

『ゑぶり場亭”』の目印はのれんのマークだけ。おでんというよりアンパンに似ている?

画像を見る

「僕の経験談ですが、雇われ店長として『ゑぶり亭”』のようなお店を繁盛させることができても、まだ独立して飲食業界で通用するレベルではないんです。料理やドリンクを作りながら、カウンターでお客さまを盛り上げつつ、掃除や洗い物など見えない仕事もきっちり全てをこなせるようになれば、どこでも通用すると思って。それを伝えることができる環境を用意したかったんです」

そうした思いからオープンさせた『ゑぶり場亭”』だったが、現在は当初の目標とは異なる環境だという。

「数年前からミシュランに掲載されるような高級店をめぐって料理や経営の勉強を続けた結果、気づけばあらぬ方向に突き進んでしまいました。本当はスタッフたちをお客さまとして招いて教育につなげたいのですが、予約が埋まっているので難しく……もう少し気軽に来店できるように業態転換したいと思っています」

2か月先まで予約が埋まる繁盛店をスタッフ育成のために変えたい。色々な意味で贅沢な業態転換のため、最近の小木さんはせんべろ系の人気居酒屋に行く頻度を増やしているそうだ。

「フレンチ、イタリアン、中華、寿司、ラーメン、なんでも揃う居酒屋がやはり最強です。居酒屋には夢が詰まっています。その基本に立ち返ることにしました。もちろん、お客さまにもお喜びいただけるよう、これまで以上に工夫をこらしてお値段以上のサービスを提供していきますよ!」

「楽のお父さん」と呼ばれる楽コーポレーションの宇野隆史社長と同じように、今ではスタッフたちから「パパ」という愛称で親しまれている小木さん。「なんだか、お父さんの代わりになってるところは結構あるかもしれない」と照れながら、まんざらでもなさそうに笑っていた。

繁盛店にはお客さんの感動を生むサービスが欠かせなく、そのためにはスタッフの育成が必要であり、何より居酒屋を愛する気持ちが肝心だ。そんな先人たちから受け継がれた小木さんの経営哲学は、次の世代にも順調に受け継がれていくのだろう。

『ゑぶり場亭”』
住所/神奈川県横浜市中区宮川町(詳細は非公開)
電話番号/非公開(予約はInstagramにて)
営業時間/18時以降、一斉スタート
定休日/不定休
坪数・席数/4坪・8席
https://www.instagram.com/everybody_1016/

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。