居酒屋の「売上」は大きく回復も、人件費や食材費の高騰で「増収減益」の傾向
11月8日、東京商工リサーチが全国の「酒場・ビヤホール(居酒屋)」を運営する主要320社の2022年度(2022年4月〜2023年3月)業績動向調査結果を公表した。コロナ禍の営業制限がなくなり、2022年度の居酒屋の売上高は回復したが、コスト上昇の影響は大きく、最終利益合計は赤字だったことが分かった。
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2022年度は前年度に比べ売上が上昇し、赤字幅も縮小
調査結果によると、居酒屋の2022年度の売上高合計は5,649億4,800万円。2020年度4,350億3,100万円、2021年度3,608億2,700万円であったため、新型コロナウイルス感染症の影響が深刻だった2021年までと比べると、業績は大幅に改善したといえるだろう。前期比で見ると、1.5倍の増収だ。
一方、最終利益合計は23億8,200万円の赤字だった。ただし、2020年度(-111億5,690万円)、2021年度(-107億8,800億円)に比べると赤字幅は大きく縮小した。
損益別の事業者数では、黒字は206社。こちらも2020年度、2021年度と比べて黒字事業者の割合は増加したが、黒字事業者が7割を超えたコロナ禍前の2019年度の水準には届かなかった。
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深刻なコスト増で「増収」でも「減益」の居酒屋が増加
対前年の増減収別で見ると、2022年度の増収事業者は245社(前期比250.0%増)で、構成比の76.5%を占めた。コロナ禍での落ち込みの反動が数字に表れたといえる。一方、対前年の増減益別では、増益は168社(前期比22.9%減)で構成比52.5%、減益は120社(前期比66.6%増)で構成比37.5%となった。
対前年収益別では、「増収増益」は139社、「増収減益」は97社、「減収増益」は25社、「減収減益」は20社という結果になった。増加率が最も多いのは「増収減益」であり売上は回復傾向にあるが、物価高や人材不足からの人件費高騰などの影響を受けている店舗が多いことがうかがえる。
コロナ禍の制限が徐々に緩和され、客足が戻ったことで2022年度の居酒屋の売上は大きく改善した。一方で、増収減益の居酒屋が増加していることからは、コスト上昇分の価格転嫁に二の足を踏んでいる店舗が多いことが考えられる。原料費や原材料価格、人件費などは、時勢の影響を強く受けるため、経営努力によるカバーには限界がある。適正な価格転嫁が喫緊の課題になりそうだ。
