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『ガストロノミー “ジョエル・ロブション”』関谷健一朗さんが目指す「優しさの循環」とは

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『ガストロノミー “ジョエル・ロブション”』エグゼクティブシェフ(総料理長)関谷健一朗さん

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フランスの美と洗練を具現化した日本が誇るグランメゾン『ガストロノミー “ジョエル・ロブション”』。2007年に『ミシュランガイド』が東京に上陸して以来、現在まで三つ星に輝き続けるこの名店で、日本人として初めてエグゼクティブシェフ(総料理長)に就任したのが関谷健一朗さんだ。

2023年には日本人初の「M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)料理部門」を受章。今年3月には『ゴ・エ・ミヨ 2024』の「今年のシェフ賞」に選ばれた。フランス料理人が憧れるすべてのタイトルを手にしたように見えるにもかかわらず歩みを止めない関谷さんは、今、何を目指しているのだろうか。

フランス修業時代に初めて『ゴ・エ・ミヨ』を手にした

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関谷さんにお会いしたのは、『ゴ・エ・ミヨ 2024』発刊授賞式直前だった。

「僕が選ばれたことは事前にお知らせいただいたのですが(※編集註:書籍制作のため)、ほかに誰がどの賞を受賞するか、情報は厳格に守秘されていて、登壇する僕たちにも事前には一切告知されないのです」

式ではどなたに会えるのだろう、楽しみだな、と表情を崩す。

『ゴ・エ・ミヨ 2024』発刊 授賞式&ガラ・パーティーにて(写真提供:ゴ・エ・ミヨ ジャポン)

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日々“満点”を追い求める料理人という職業

「今年のシェフ賞」。筆者の率直な感想としては、今年この人でなければ誰がという当然すぎるセレクトであり、むしろもう少し早くてもよかったと思わなくもないのだが、本人はどう感じているのだろう。

「名誉であり、ありがたいことです。選考理由を具体的にお伝えいただくことはないのですが、自分では昨年(2023年)『M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)料理部門』を受章したことを評価していただいたのではないかと思っています。フランスでは、1985年に師である故ジョエル・ロブションさん(以下、ロブションさん)が「今年のシェフ賞」を受賞しています。まず『ミシュランガイド』で三つ星をいただき、次に『ゴ・エ・ミヨ』の『今年のシェフ賞』をいただくというロブションさんと同じ流れなのも個人的には嬉しいですね。

フランス料理人としては、フランス料理から『今年のシェフ賞』が選ばれたというのも光栄です。というのも、僕個人の印象ですが、フランス版ではフランス料理に主軸が置かれているように見えます。ところが日本の場合は、日本料理はもちろん寿司、天ぷら、さらには中国料理、イタリア料理、イノベーティブなど実にさまざまな料理のジャンルがあり、それぞれに活躍している料理人さんがいらっしゃるので、そもそもフランス料理が選ばれるかもわからないわけです。フランス料理に光を当ててもらえてよかった(笑)」

「カラスミを忍ばせ香ばしく焼きあげたマナガツオ 菜の花を合わせて」(写真提供:ガストロノミー “ジョエル・ロブション” )

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言葉の端々にフランス料理そのものへの愛と敬意がにじむ。

渡仏経験を持つ料理人は、フランスで『ゴ・エ・ミヨ』と出合い、通称「赤本」(『ミシュランガイド』)と「黄本」(『ゴ・エ・ミヨ』)について誰もが一家言あり、また語るべきエピソードを持っているが、関谷さんにとって『ゴ・エ・ミヨ』とは何だろう。

「フランスで働いていた時は、『赤本』と『黄本』を見比べて、よい料理とは、よいレストランとは何か、何がどう評価されるのか、自分なりに考える基準としていました。『ゴ・エ・ミヨ』について言うと、地域における役割や個人としての活動も評価されるように思います。個人的には100点や10点ではなく、20点満点であり、なかなか満点がつかないというのもフランスのエスプリを感じて好きなところです。料理人というのは、今日より明日もっと進化しようと、自分が理想とする“満点”を毎日追い求めていく職業ですから」

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shifumy 詩文

ライター: shifumy 詩文

旅するフードライター&インタビュアー。“ガストロノミーツーリズム”をテーマに世界各地を取材して各種メディアで執筆。世界の料理学会取材や著名なシェフをはじめ各国でのインタビュー多数。訪れた国は80か国以上。著書に『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ3巻(小学館)。