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「この子メインでいける」。 レモンサワーの人気店『酒肆一村』を生んだオーナーの演繹的思考

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スタッフの笑顔も魅力の『酒肆一村』

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氷点下20度の氷が入った5種類のレモンサワーが人気の『酒肆一村(しゅしいっそん)』(東京都江東区)がファンの心を掴んでいる。店主の大野尚人氏に、成功の秘訣、戦略、今後の展開などを聞いた。

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かつては軽視していたドリンク「レモンサワー」

日本酒やワイン、スコッチウイスキーはもちろん、ビールでも銘柄にこだわり、お酒の味そのものを楽しむ人は多い。『酒肆一村』はそうした“お酒の風味そのものを楽しむお酒”としてレモンサワーに着目した。

大野氏は5種類のレモンサワーを開発。それぞれ味わいの異なる商品を用意し、メインに据えた結果、客足が途絶えない店舗となった。

ここに至るまでは多少の回り道を余儀なくされている。大野氏にとって最初の店となった『酒亭 沿露目(ぞろめ=江東区門前仲町)』での産みの苦しみが『酒肆一村』の成功へと繋がっていく。当初から『沿露目』は日本酒が楽しめる店とする予定だったが、それだけでは不十分と考えていた。

オーナーの大野尚人氏、グループ店の『酒房 蛮殻』にて

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「日本酒メインとした時に“日本酒オタク”的な店になってしまうので、それを崩したかったという思いがありました。崩すとしたらビールやハイボールは誰もが考えるのでしょうが、もう一つ、店に来る意味のようなモノがほしかったというのがあります。居酒屋のドリンクメニューを見ると必ずあるのがウーロンハイ、ホッピー、レモンサワーです。これらは、20代の頃の僕からすると『クズみたいなモノ』『どうしようもない飲み物』というドリンクでした」

その時点で大野氏の頭の中にレモンサワーを楽しむという発想はなかった。もともとレモンサワーは焼酎にレモンと炭酸を入れた手軽に飲めるカジュアルな商品と認識されがちで、多くの人の感覚では「レモンの味がして、飲みやすく酔えればいい」という程度の扱いと言えるのかもしれない。しかし、大野氏はある時、思ったという。

「なぜ、ウーロンハイなどをクズみたいなモノと自分が思っているのかと考えた時に『おいしくないから、そう考えているのだろう』と思いました。それなら『おいしくしちゃえばいいんだ』と。自分はバーが好きだったのでジントニックを若い頃から飲んでいて、これをレモンサワーとして出せば、日本酒に匹敵するものになるんじゃないかなと思いました」

こうして1店舗目の『酒亭 沿露目』は4種の酒を楽しめる店として2013年11月にオープンする。

「名店の作り方に必要な2つ(ビールとハイサワー)があって、僕の推しの日本酒があって、僕なりのオリジナリティ(レモンサワー)を加えてこの4種をファーストの店でボーンと出したわけです。この中でビールとハイボールは誰でも知っていて大手メーカーもたくさん出していましたが、レモンサワーについては誰も注目していなかったものを、僕はグーっと(位置付けを)上げました。『まずい』と思われていたものを僕がおいしくして、残る“3選手”(日本酒、ビール、ハイボール)に並べてしまったわけです。それは圧倒的に人気が出ます。1店舗目からその先、複数店舗を考えていたので『この子(レモンサワー)で1店舗いけるな』と思いました」

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/