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“楽”出身者の新店、新中野『まんまる』。名物はエゾ鹿も、“北海道にこだわらない”の真意

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居酒屋修業前は酒屋で働いていた齊藤さん。日本酒を中心に知識の幅も広い

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気持ち良く働きたいなら店づくりは妥協しない

売上を追求せずとも経営が成り立つのは、坪賃料2万円以下という店舗のおかげでもある。元々「神輿の休憩場所」という縁起の良い空間だったが、飲食店用途ではなかったため開業までには苦労も多かったそうだ。

「なかなかガス管が通らず、この場所で本当に飲食店が開業できるのか不安な日々が続きました。結局、都市ガスは諦めてプロパンガスを契約しましたが、工事は半年も遅れて……時間がかかった分だけ、内装に力を入れることができたので、今となっては良かったと思っていますけど」

困難続きだった『まんまる』の誕生に大きな影響を与えたのは、楽コーポレーションの先輩であり、渋谷『IZAKAYA P/man』などを運営する勝瀬哲史さんからの一言。「店づくりに妥協すると気持ちが入らない。最善を尽くした方が絶対に気持ちよく働ける」というアドバイスだった。

齊藤さんは開業までの空いた時間で北海道へ出向き、小樽・北一硝子のランプといったインテリアを購入。好きなアーティストのポスターを買い集めたほか、アンティークのガラス棚なども揃えた。最も力を入れたのがカウンター席だ。

「貴重な北海道産真樺の一枚板があると聞き、八王子まで買い付けに行きました。その際に車を出してくれたのも哲さん(勝瀬哲史さん)です。いろいろな場面で相談にも乗っていただき、本当に感謝しかありません」

神酒所(みきしょ)だった場所を改装した店内。多くの要素にストーリーがある

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インタビューの中で齊藤さんが繰り返していたのは、楽コーポレーションの先輩たち、そして北海道の生産者たちへの感謝の言葉だ。

「正直、僕の故郷ってあまり名産がないんですよ。海も近くないですし。だから訓子府町のエゾ鹿を食べて、感動しているお客様を見るのが嬉しい。もっといろんな人に食べてもらって、知名度を上げて、いずれは地元に恩返しできたらなと思っています」

第一声は「北海道産にこだわっている訳ではない」だったが、メニューやインテリアの随所、会話の端々からも、齊藤さんの北海道への愛情が伝わってくる。せんとくんのモノマネをするなど冗談交じりで話してはいたが、やはり北海道への思いは本物。経営戦略として北海道産を売りにしている訳ではなく、単純に「最善を尽くして、好きなものを集めた」結果としての“北海道産”なのであった。

『まんまる』
住所/東京都中野区中央3-34-1 
電話番号/03-6382-4370
営業時間/18:00~23:30
定休日/不定休
坪数・席数/約12坪30席
https://www.instagram.com/manmaru_shinnakano/

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。