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20代で独立し連続ヒット! 池袋『立呑みアーニー』坪月商70万円超えの軌跡【居酒屋の輪】

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店長のじゅんじゅんさん。2020年『立呑みソルト』開業初日のお客が今や店を切り盛り

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チーム力と創意工夫で客を惹きつける

「自分が食べたいものを毎日作ってる」と語るのは、『立呑みアーニー』の店長・じゅんじゅんさん。原価率30~32%というルールや人気レシピは共有するが、メニューは店舗ごとに異なり、現場スタッフにほぼ任されている。例えば『立呑みアーニー』の人気No.1メニューは、じゅんじゅんさんの名を冠した一品だ。

新鮮な国産レバーをスパイシーに焼き上げた「おつまみ純レバ」(620円)

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じゅんじゅんさんは経営者二人より飲食経験が豊富。他店の仕事帰りにお客として通っていた彼を2~3年かけてスカウトし、店長に抜擢したという。煮込み料理が得意で、週替わりの「今週の煮込み」も店の名物。煮干し風味、メキシコ風、二郎系などアイデアが光る。取材時は王道のモツ煮だったが、自家製ニンニクオイルが効いており、酒の進む味が印象的だった。

今週の煮込「大衆モツ煮」(600円)。オイルが染みた白髪ねぎがアクセント

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コロナ禍、メシマズ店からの大逆転劇

日替わりメニューは口コミで高評価だが、創業時は「メシマズ店」と揶揄されたことも。2019年、田中さんは「会社辞めて飲食をやる」と宣言し退職するも、直後にコロナ禍が直撃した苦境を振り返る。

「社会人3年目、温泉旅行中に小嶋をうまいこと引き入れて、独立開業の準備を進めました。恵比寿で物件を見つけていたんですが、契約直前に緊急事態宣言が出て。飲食店を経営していた友人に相談したら『少し待ってから開業した方がいい』『状況が落ちきった時が1番の買いどきや!』と言われ、計画を白紙に」

取材日のメニューは全45種。ユニークなネーミングにも工夫が垣間見える

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二人は下北沢の『晩杯屋』でアルバイトを開始。「お客さんとの距離感やシステムを学んだが、自分たちの目指す店とは違う」と感じ、2020年10月、赤羽岩淵駅前に『立呑みソルト』をオープン。近所の五畳一間で共同生活しながらの船出だった。

「どん底でしたね。店は駅前とはいえ出口と出口のちょうど狭間で。地元の飲食界隈からデスロードって呼ばれるほど人通りがありませんでした。一日数人しかお客さんが来ない。小嶋がビラ配り、僕がワンオペでがんばったけど『これって自分達がしたかったことだっけ?』と考えを改め、たとえお客さんが一人でも『二人で盛り上げる』と切り替えたら、翌週から売上が2倍、3倍に。『あそこの店、メシマズやけど、おもろいやん(笑)』と評判になりました」

学生時代は個人店と大手チェーン、二つの居酒屋でバイトリーダーを掛け持ちしていた田中さん。料理に自信はあったが、独立後は「全然ダメ」と痛感。「バイト先はオペレーションが整っていたけど、ゼロからの構築は別物。接客で誤魔化した結果、酒飲み場に」と笑う。緊急事態宣言の休業中に仕入れや動線を見直し、人気店のレシピを研究しながらオリジナルメニューを開発。月商150万円未満だった『立呑みソルト』は、フードの質向上と共に売上を伸ばし、現在は月商500万円近くまで成長した。

フードの品質向上でドリンク売上も上昇。FD比率は約50%を維持している

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フードバリエーションが豊かになったのは、飲食業界の仲間が増えたことも大きい。例えば人気メニュー「ハムエッグの春巻き」は田中さんの行きつけ、中目黒『風見堂』の名物だ。一方「生たこ柚子塩のお造り」は東長崎『円蔵』からの一品。ほかにも「スパイシー人参カラムーチョ」(540円)は高円寺『酒場ニホレモ』から。持ち前のコミュニケーション能力を発揮し「この料理めっちゃうまいですね。パクってもいいですか?」と事前に許可を取る抜け目のなさも光る。

左は「ハムエッグの春巻き」(600円)。右は「生たこ柚子塩のお造り」(700円)

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。