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飲食店の業務効率化をフレンチの名店に学ぶ。なぜ『L’AS』は5000円のフルコースを実現できるのか?

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最近導入した「Airレジ」。姉妹店の売上管理に重宝しているとか

「飲食業界の人材不足は自分たちの世代が招いたこと。だから僕らが先頭に立って、若い人たちが働きやすい環境を作っていかなければならないんです」。そう語るのは表参道のフランス料理店『L'AS』のオーナーシェフ・兼子大輔氏。“なぜ『L'AS』は積極的に業務効率化に取り組むのか?”と聞いた際の答えだ。

『L'AS』は飲食店としては珍しく月間8日の店休日を設けている。またWebツールやアプリを用いての業務効率化にも積極的だ。これらは従業員が働きやすい環境を作るため、そして『L'AS』の最大の魅力である「5,000円のおまかせコース」を実現するために行われている。兼子氏は語る。

「労働時間が長いのに安月給、おまけに上司からは無理難題を言われる……。これでは飲食業界に人は集まらない。古い体質を経験してきた僕らには、悪しき習慣を正し、新しい仕組みを作る責任があると思うんです」

この言葉を実現するため、そして多くの美食家を惹きつけるために、兼子氏が行っている業務改善は多岐に渡る。ここではその内容を詳しく紹介していきたい。

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効率化を考えて厨房はオープンキッチンに

効率の良さを追求した店舗構造

兼子氏は大阪、東京、そして本場パリで王道のフランス料理を学んできた人物。その兼子氏が手掛けるのが名物である「5,000円のおまかせコース」だ。品数は9~10品、もちろんフランス料理の神髄を感じられる素晴らしい料理が供される。この価格を実現するためには相当なコスト削減が必要なはずで、特に人件費と食材費をどれだけ抑えられるかが鍵となる。実際にどのような策を講じているのだろうか?

「まず、スタッフの動きを極力減らす努力をしています。店内をオープンキッチンにしているのはそのためで、キッチンからお客様の状況を常に把握できますから、“次の料理をお願いします”というスタッフ間のやり取りをなくすことができる。また、カトラリーを各テーブルに収納しているのも、セッティングの手間を減らすことを目的にしています。ホールスタッフがテーブルや厨房を行き来するのは、一回一回は大した手間ではないんですけど、仮に一晩で100名のお客様、そして9皿のコース料理を提供するとなると何百回と往復することになる。これを減らせば、ほかの部分に力を入れられると考えたんです」

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カトラリーはセッティングの手間を省くためテーブルの引き出しへ収納

スタッフを効率的に動かす仕組みはこれだけではない。たとえば厨房スタッフは、コック服ではなくシャツにエプロンという格好で調理するのだが、これは厨房スタッフも接客に参加できるようにと考えられたもの。営業中、時間帯によっては厨房スタッフがホールスタッフをサポートし、逆にホールスタッフが厨房スタッフをサポートすることもあるという。こうして厨房とホールを行き来できるスタッフを育てることで、本来であれば10名の人員が必要なところ、8名でまわすことを可能にしている。

そして『L'AS』が素晴らしいのは、“効率化”を無味乾燥なものでなく“エンターテイメント化”しているところだ。客は引き出しからカトラリーを取り出す物珍しさを楽しみ、そしてオープンキッチンの臨場感も味わえる。厨房スタッフが接客してくれれば、料理のことをより詳しく聞くこともできるだろう。あたかも客を喜ばせるために用意された演出のようだ。

「店を運営するのに必要なシステムを追及したら結果的にそれが個性に繋がった。“面白そうだからやってみよう”ではダメ。あくまでも何が必要なのかを徹底的に考えて、それをどういう演出で実現すべきかを考える。この順番が大切です」

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人気メニュー「フォアグラのクリスピーサンド」も、じつは効率化を考えて生まれたメニュー。スピーディーに提供できるのが特徴

最新テクノロジーも積極的に採用

兼子氏はスタッフの動きを極力減らすために、最新のWebサービスやアプリも用いる。たとえば予約管理には「食べログ」の予約システムを活用。Web上で一元管理することでミスが減り、電話を受けてから予約台帳に書き写す手間も無くなった。また『L'AS』の厨房では、隣で営業する姉妹店『CORK』の料理も担当しているが、目の届かない『CORK』での配膳状況を管理するために独自開発したアプリも導入しているのだとか。

「このアプリは知り合いに開発してもらったもので、タブレットで利用しています。画面には『CORK』の座席表が表示されていて、配膳の状況を座席ごとに確認することができます。使い方は簡単で、お客様の状況を『CORK』のスタッフが確認しながら、“次の料理を作り始めてください”と画面をタップする。すると厨房に音が鳴る仕組みになっているので、その音が鳴ったら僕らが料理を作り始める。オーダーから5分、10分と経過したらアラームがなるようになっており料理の提供漏れも防げます。これまで『CORK』のスタッフは『L'AS』の厨房までオーダーを伝えに来ていましたが、このシステムを導入してからはその手間を省けるようになりました」

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姉妹店『CORK』の配膳状況を把握するためのアプリ

そして最近、導入したのがPOSレジアプリ「Airレジ」だ。レジとして活用していると同時に、今年、東京ミッドタウンにオープンさせたデリカッセン『RECIPE & MARKET』の売上をリアルタイムで確認するためにも用いているという。

「『RECIPE & MARKET』では“きのこのリゾット”といった惣菜を販売しているのですが、Airレジを使えば、何がどれだけ売れているのかをリアルタイムで把握できます。その状況を細かく確認しながら、田町にあるセントラルキッチンに作るべき数量を伝えるんです。こうして離れていても姉妹店の動向を確認できるのがAirレジの良いところですね。あとは売上の集計が簡単にできるので、毎月のふり返りが早くなった。その月が終わればすぐに翌月の戦略を練ることが可能です」

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『L’AS』オーナーシェフ・兼子大輔氏

考え抜き、手を尽くすことの大切さ

『L'AS』の業務効率への追及は店内の構造を最適化することから、最新のWebサービスやアプリの利用まで多岐に渡る。そもそも『L'AS』の魅力である「5,000円のおまかせコース」ですら、効率化を図るための仕組みのひとつだというから驚きだ。

「『L'AS』は5,000円のコース一本で勝負しているので、仕入れに対してすごく強いんです。たとえば1,000円のオマール海老を仕入れるとしても、普通の店なら一回に仕入れる量はそこまで多くない。でもウチは1カ月同じコースを提供するんで、月間1,500本ぐらい仕入れることになる。そうすると仕入れ業者に対して『750円でやってくれたら、1,500本仕入れられるんですけどね……』なんて交渉ができるんです。つまりスケールメリットが大きい。それに毎日同じ料理を提供するんで食材のロスも出ない。そういう強さがあるんで、原価率もかなり抑えられています」

話を聞けば聞くほど、さまざまなことに計算を巡らせていることがよく分かる。なぜ兼子氏は、ここまで考え抜くことができるのか? 最後にその理由を聞いた。

「『L'AS』は5,000円という価格でどこよりも美味しい料理を、そして価値あるサービスを提供しようと始めました。この土俵で勝負できるカタチを追及していったら、結果的に今のような店づくりに繋がっていったんです。飲食業界は本当に厳しい世界です。考えに考え抜いて、手を抜いているものは何ひとつない……そういう状況を作ったとしても成功できるとは限らない。だからこそ、どんなジャンルでもいいですけど、やる限りは東京で一番になるつもりでやる。飲食業界で生き残るには、そういう覚悟が必要なのではないでしょうか」

自らの個性を生かすため、そして世界一のグルメ都市である東京で勝ち残るために業務の効率化を図りながら常に進化を続ける『L’AS』。その進化の先には、自身の成功だけでなく、飲食業界の明るい未来も重ねられている。冒頭の「僕らが先頭に立って、若い人たちが働きやすい環境を作っていかなければならない」という言葉に、その想いを強く感じ取れるのではないだろうか。

『L’AS』
住所/東京都港区南青山 4-16-3 南青山コトリビル1F
電話番号/080-3310-4058
営業時間/12:00~L.O.13:00(土日祝のみ)/17:30~L.O.22:30(月~土)、17:30~L.O.22:00(日・祝日)
定休日/不定休
席数/40
http://www.las-minamiaoyama.com/

Photographs/Hiroyuki Uchiumi、Editting&Text/Hirokazu Tomiyama

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『Foodist Media』編集部

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