飲食店ドットコムのサービス

キッチンカーで飲食店を開業するには? 移動販売のメリット、必要な資格・許可などを解説

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

画像素材:PIXTA

画像を見る

初期費用や固定費を抑えて飲食店を開業する一つの方法として、キッチンカーなどを利用した移動販売が挙げられる。今回は、キッチンカーなどを利用した移動販売のメリット・デメリットのほか、移動販売に必要な準備、資格・許可などを紹介する。

【注目記事】初の立ち上げで月商700万円達成の渋谷『大人気』。集う人を幸せにする兄弟の唯一無二の店づくり

キッチンカー(フードトラック、ケータリングトラック)とは?

キッチンカーとは、食品の調理設備が整った移動販売車のこと。フードトラックやケータリングトラック、ケータリングカーなどとも呼ばれ、商業施設の駐車場や駅前広場、イベント会場などへの出店に使われる。オフィス街にも出店し、ランチのテイクアウトを提供しているものもその一つである。

コロナ禍以降、テイクアウト需要が高まり、実店舗を持っている飲食店がキッチンカーで移動販売を始めるケースも散見された。アフターコロナの現在ではイベント需要も回復し、出店できる機会は増えていくとみられている。では、キッチンカーによる移動販売にはどのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。

キッチンカー(移動販売)のメリットとは?

実店舗を持たず、キッチンカーで開業することのメリットとしては、次の4つが挙げられる。

■初期投資を抑えられる
キッチンカーのメリットは、初期投資を抑えられることだ。実店舗で飲食店を開業するには、不動産の初期費用や内装工事費用、備品代といった多額の費用が必要になる。しかし、キッチンカーであれば、車両購入費用や調理設備の設置費用などがかかるものの、実店舗を構えるよりも少ない費用で開業できる。

■固定費を抑えられる
家賃や人件費などの固定費を抑えられることも、キッチンカーのメリットの一つ。キッチンカーの場合、駐車場代やガソリン代などが固定費として発生するが、実店舗の家賃や光熱費などに比べて低く収まるケースがほとんど。

また、キッチンカーはホールスタッフが不要なため、人件費も抑えられる。提供する料理によっては1人で営業することもできるため、実店舗と比べると人件費は格段に少なくてすむ。

■さまざまな場所に出店できる
キッチンカーの特徴は移動ができること。そのため、さまざまな場所に移動して販売できるというメリットがある。どこでも好きなところで出店できるわけではないが、天候や時間帯などに合わせて出店場所を変えることができる。

■出店する場所や時間に合わせてメニューを変えられる
キッチンカーであれば、出店する場所や時間に合わせてメニューを変えるといったこともできる。オフィス街であれば、ビジネスマンのランチ時間に合わせた弁当の販売や、住宅の多い駅前であれば、帰宅時間に合わせて惣菜を販売するといった工夫も可能になる。

画像素材:PIXTA

画像を見る

キッチンカー(移動販売)のデメリットとは?

一方で、キッチンカーによる移動販売にはルールやさまざまなリスクもある。メリット、デメリットを踏まえた上で、キッチンカーでの開業を検討したい。

■営業する自治体すべての営業許可を取る必要がある
キッチンカーを開業するためには、自治体の営業許可を取らなければならない。複数の地域で営業する場合、それぞれの自治体で営業許可を取る必要があり、それだけ手間や費用がかかる。

■良い出店場所を確保しなければならない
実店舗がないキッチンカーにとって、出店場所の確保は非常に重要だ。営業許可を取ったからといって、どこにでも出店できるわけではない。出店場所の使用許可を得る必要があり、売上が見込めそうな場所はすでに出店者が決まっている場合も多い。また、出店料の支払いを求められる可能性もある。場所によっては売上を十分に確保できない点もデメリットといえる。

■売上が天候に左右される
売上が天候に左右されてしまうというデメリットもある。屋外に出店するキッチンカーは、雨天で人通りが少なくなると、売上が減ってしまう。また、気温が下がれば冷たいものは売れにくく、気温が上がれば温かいものは売れにくくなる。

■仕込み場所を確保しなければならない
キッチンカーで全ての仕込みができれば問題ないが、それが難しい場合は仕込み場所を確保しなければならない。仕込みは営業許可を取得した場所で行う必要がある。

キッチンカー(移動販売)を開業するために必要な準備とは?

キッチンカー(移動販売)を開業するにあたっては、費用や資格・営業許可取得などの準備が必要になる。まずは、初期費用にどれくらいかかるかを検討したい。キッチンカーの主な初期費用としては、下記の項目が挙げられる。

・車両購入費
・設備費(調理設備、冷蔵庫、発電機など)
・備品(メニュー、商品サンプルなど)
・消耗品費(テイクアウト用の包装、事務用品など)
・営業許可取得にかかる費用(講習費用、申請費用など)

初期費用としては300〜500万円が相場だが、特にキッチンカーの調達方法によって金額が変わってくると考えられる。

また、キッチンカーの開業には、食品衛生責任者の資格と保健所の営業許可が必要だ。食品衛生責任者の資格は、都道府県の食品衛生協会による食品衛生責任者養成講習会を受講すれば1日で取得できる。なお、キッチンカーの場合、調理師免許は必要ないが、調理師免許があれば講習を受けることなく申請のみで資格取得が可能だ。

さらに、保健所で「飲食店営業」の営業許可を取得しなければならない。申請する保健所は販売する地域を管轄する保健所であり、住んでいる地域の保健所ではない点に注意したい。営業許可申請でチェックされる主な項目は下記のとおり。

・調理場と運転席は完全に区切られているか
・給水タンクの容量は充分か
・シンクの数と大きさは充分か
・衛生管理に必要な手洗い石鹸と消毒液は常備されているか
・換気はしっかり考慮されているか
・仕込み場所は確保できているか

もちろん、これ以外にも多くのチェックされる項目があり、キッチンカーを複数台運営する場合は、それぞれについて営業許可を取得する必要がある。

続いては、キッチンカーの調達方法についてご紹介する。

画像素材:PIXTA

画像を見る

【注目記事】卓上サワーの仕掛け人が語る「2023年の居酒屋トレンド」。エンタメ性がヒットの鍵に?

キッチンカーの調達方法とは?

キッチンカーを調達するには、新車をキッチンカーにカスタマイズするほか、中古キッチンカーの購入や自分の車を改造することが考えられる。新車をカスタマイズすれば希望に合ったキッチンカーにできるが、その分コストがかかる。中古キッチンカーや自分の車の改造であればコストは抑えられるが、内装や設備にある程度の制限はかかるだろう。

また、キッチンカーをレンタルするという方法もある。すでにレンタル会社が営業許可を取得している場合が多く、レンタル費用が固定費としてかかるものの、手続きにかかる時間や手間を削減できることはメリットといえる。

いずれの場合も、予算や販売するメニューなどを検討した上で、自分に合った調達方法を検討したい。

キャッシュレス決済の導入や、SNS運用で集客を

キッチンカー(移動販売)を運営するためのポイントをいくつかご紹介する。一つは、キャッシュレス決済の導入だ。キッチンカーの運営は少人数で行う場合が多く、調理と提供、支払いを1人で行わなければならないこともある。支払いをスムーズに行えるだけでなく、衛生面のメリットもあるため、できるだけキャッシュレス決済は導入しておきたい。

さらに、SNSやウェブサイトの活用もポイントだ。販促のために看板やチラシを作成することも大切だが、出店場所やスケジュールをSNSで発信することで、集客アップにつなげることができる。

また、キッチンカーを開業するにあたっては、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「地域雇用開発助成金」といった補助金を利用できる場合がある。販売する地域の補助金を調べて適切に活用したい。

キッチンカーの開業は実店舗を開業するよりもコストや手間を抑えられるが、それでも多くの準備が必要になる。補助金の活用も含めてしっかりと計画を立てた上で、着実に準備を進めることが大切だ。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com