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飲食店の多店舗展開を助ける「セントラルキッチン」とは? メリットや導入のポイントを解説

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多店舗展開する飲食チェーンなどでは、セントラルキッチンを導入している事例が多く見られる。今回は、セントラルキッチンの仕組みやメリット・デメリットのほか、導入にあたって考えておきたいポイントについて解説する。

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セントラルキッチンとその仕組みとは?

セントラルキッチンとは、チェーン展開する飲食店やスーパー、病院、福祉施設、学校など複数の場所で提供する食品の製造や加工を、1か所に集中させる施設のこと。セントラルキッチンの導入には、味の均一化や業務効率化だけでなく、原価を下げるという目的もある。

セントラルキッチンで製造や加工を行う食品には、比較的保存しやすく劣化しにくいものが適している。冷凍や真空パックで保存するとはいえ、製造・加工から配送、提供までに時間がかかるため、パンや麺類のほか、肉や魚の加工品、カレー、パスタソース、デザートなどが向いている。どの段階まで製造や加工を行うかは企業またはメニューによって異なるが、飲食店における一般的な食品提供までの流れは下記のとおりだ。

・セントラルキッチンで調理
・冷凍や真空パックなどの方法で保存
・店舗へ配送
・店舗にて再加熱、盛り付けなど
・提供

飲食店がセントラルキッチンを導入するメリット

では、多店舗展開する飲食店にとってセントラルキッチンの導入にはどのようなメリットがあるのかを紹介する。

■料理の品質が安定する
各店舗で調理を行う場合、たとえ同一のレシピやマニュアルを共有していても、店舗の設備や従業員のスキルによって、料理の質に差が生まれてしまうことがある。しかし、厳密な管理下で一括調理された食品を使えば、どの店舗でも安定した品質の料理を提供することが可能だ。多店舗展開する飲食店の場合、そのブランドの価値を保つことにもつながる。

■衛生管理がしやすくなる
食材や調理器具の衛生管理は、店舗が増えるほど難しくなる。その点、1拠点で調理を行うセントラルキッチンであれば、徹底した品質チェックも実施しやすい。各店舗においては、生の肉や魚といった食材を一から調理する機会が減るため、まな板などの調理器具も清潔を保ちやすくなるだろう。

■家賃や人件費などのコストを削減できる
セントラルキッチンで製造された半調理済みの食材を使うため、各店舗に専門の調理スキルを持つ人材や、広い調理スペースは不要。また、水道光熱費などの固定費も最小限に抑えられる。

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飲食店がセントラルキッチンを導入するデメリット

セントラルキッチンにはさまざまなメリットがあるが、その一方でいくつかのデメリットも考えられる。

■初期投資が必要になる
セントラルキッチンを導入する場合、食品の製造・加工・保管を行うために、広い土地と建物を確保する必要がある。また、大量の製造・加工を行うための設備も必要だ。ただし、メリットにも挙げたように、稼働後は各店舗におけるコストの削減が可能になる。そのため、セントラルキッチンを導入したらどれくらいで初期投資を回収できるか、事前にしっかり試算しておくことが重要だ。

■新たなランニングコストが発生する
複数の店舗で提供する食品をまとめて製造・加工する大規模な施設として、それ相当の水道光熱費などがかかるうえ、各店舗への配送コストも発生する。各店舗がそれぞれ調理を行う場合のコストと比較し、最終的にどちらの方が効率的なのかを判断したい。

■料理の手作り感がなくなる
提供するメニューが画一化すれば、いい意味での「手作り感」は必然的に薄れてしまう。まずは、ブランドとしてどういった価値を打ち出していくのか、その方向性を明確にする必要があるだろう。

■万が一の際に被害が大きくなりやすい
例えばセントラルキッチンの衛生管理が不十分だったことで食中毒が発生した場合は、1店舗だけでなくすべての店舗に影響が及ぶ可能性がある。ブランド全体の品質維持に貢献できる一方、「万が一」の際は被害のボリュームも大きくなりやすいことを覚えておこう。

初期費用の確保が難しい場合は、補助金の利用や、セントラルキッチンのアウトソーシングなども検討してみよう。いずれにしても、自店舗に合った形を模索し、その上でコストが見合うかどうかを検討することが大切だ。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com