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10坪で月商600万円超の恵比寿『amme』。元大手証券マンが飲食業界に革命を起こす

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株式会社志成、株式会社志成NEXT 代表取締役社長 佐藤廉也氏

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JR恵比寿駅西口から徒歩3分。にぎわいから外れたビルの1階に、「ニューホッカイドウスタンダード」を掲げた居酒屋『amme』がオープンしたのは2021年9月。さまざまな業種、業態が混在する恵比寿エリアにあって「北海道料理は珍しい」と、オープン直後から人気を集め、間もなく2周年を迎える。元・大手証券マンが率いる、約10坪の小さな店が繁盛する理由を聞いた。

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早稲田大学から大手証券会社へ就職。順風満帆な歩みから飲食業へ転身した理由

早稲田大学を卒業後、大手証券会社に就職と、順風満帆に歩んできた佐藤廉也氏。2年目には早くも富裕層の懐に飛び込む自分らしい営業スタイルを確立。営業成績も上がって、周囲から認められつつあったところで「事件」ともいうべき転機があった。

研修後、個人店で食事をしていた時、仲間の一人が店長に絡み始めたのだ。

「お前の給料いくら?」「オレの年収に勝てるわけがない」

厳しい数字の世界に身を置いていた佐藤氏にとって、飲食店で仲間と集まって食事するひとときが心の支えであり、明日への活力だった。だからこそ、そんな差別的な言葉が許せなかった。

佐藤氏は「会社を辞めて、飲食業でお前の給料抜いてやるわ!」と口にし、3日後には上司に退職の意向を伝えていたという。

退職してからの道のりは平たんではなかった。飲食業を知るために、都内の飲食店でアルバイトを始めるが、大学時代はラグビーばかりでアルバイトの経験もなかった佐藤氏は、学生のバイトリーダーに「早稲田卒ですよね? そんなこともできないんですか?」などと言われる始末。

「同期がどんどん出世していく劣等感。辛くて半年くらいは飲食業にいることを誰にも言えませんでした」

「証券会社を辞めなければよかった」と思うほど、精神的・金銭的に追い詰められる日々だったという佐藤氏。そんなどん底の状況を救ったのは、大学の友達や、証券会社の同期の言葉だったそう。

「店に来てくれた仲間が、『お前に合ってる!』『最高じゃん!』と喜んでくれた瞬間、後悔が消えました。彼らは今なお、僕の活躍を見守り励ましてくれる、大切な存在です」

丸4年間、ホールのアルバイトに加え、親戚が経営する飲食店の店長、キッチンで調理も経験した。全く稼げなかったが、「飲食業の大変さ」を実感し、そこで働く人の気持ちが分かるようになった4年間でもあったという。

その後、「営業の感覚は鈍っていないか」を確かめようと、営業代行業を1年弱経験。自身の武器は営業力であると改めて気付き、2018年、証券会社時代の同期と立ち上げたのが、営業代行・Webコンサル業を業務とする「株式会社志成」だ。

『amme』店内の風景。にぎやかで温かい家に帰ってきたような安心感が、お客を魅了する

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コロナ禍で乗り出した飲食業。リサーチ力と「接客から営業へ」戦略

佐藤氏が飲食業界に本格的に乗り出したのは、コロナがきっかけだった。コンサルティングで関わっている店が閉店することになり、経営に着手。コロナ禍にありながら1年弱で赤字から黒字転換。経営先を2店舗に拡大し、自信を得た。その2店舗は一度清算。「少しゆっくりしたい」と思ったものの、佐藤氏を慕いついてきた従業員たちの手前、それはできなかったという。

2021年8月、会社名を「株式会社志成NEXT」と改め、9月に居酒屋『amme』をオープン。佐藤氏の第二章は、恵比寿にはない「北海道色」を押し出す形でスタートした。初日から仲間も駆け付け満席。佐藤氏の船出を祝ってくれた。

北海道は佐藤氏の出身地であり、「北海道産の野菜や魚」は、アイデンティティーとして存在するという。しかし100%北海道産にこだわると原価が上がるので、あえて「ニューホッカイドウスタンダード」と銘打った。狙いは当たった。ウニやイクラをふんだんに使った看板料理が人気を集め、「北海道料理なんて珍しい」とSNSで拡散されるや、予約困難店と噂される好循環が起きた。

「うにといくらの土鍋ごはん」(3,800円)。少し値が張るが、豪華かつボリュームがあり、9割が注文するという人気メニュー

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「たとえばラム肉の場合、原価はそんなに高くないのですが、一般的には『高くてもOK』なイメージがあるので、そこを突いた値段設定にしています。お客様に『値段が高い』と思われたら終わり。恵比寿の全メニューの『最高値』『最安値』を調べ、中間に設定しているんです」

恵比寿でどんなメニューが流行っているか常にスマホでチェックし、徹底的に調査、分析するという佐藤氏。得意のリサーチ力やデータ分析力を、メニューや価格に反映させている。

「うまいやつ」「肉」「魚」など、その日の食欲に従って選びやすいメニュー構成も魅力的

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しかし、佐藤氏の真骨頂は、この先にあった。志成NEXTの理念の一つ、「人で勝負」「接客から営業へ」だ。

「『接客』はいわば御用聞き。対して『営業』は、お客様が気付いていない潜在的ニーズを掘り起こし、付加価値を付けて提供することだと捉えています。『接客から営業へ』とは、一人ひとりがプレーヤーとして、お客様に対して受動的な接客ではなく、自主的な営業をしてほしいという意味です。『amme』のスタッフには、異業種の営業経験者が多く、この理念をしっかり体現してくれることも武器だと思っています」

佐藤氏が持つリサーチ力やデータ分析に加え、営業畑出身のスタッフによるヒアリング力も大きな戦力だ。お客との会話の中でさりげなく、しかし必ず伺うという来店動機から、有効な集客の導線をつくるには、InstagramやTikTokなどどういった媒体にアプローチすればいいかを考え、導き出すのだという。

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門田聖子

ライター: 門田聖子

広告代理店勤務を経て、ライター&フォトグラファーとして活動。 新聞、雑誌、WEBサイト、広報紙、メルマガ、ラジオ原稿、キャッチコピー、校正など実績多数。 小説、写真の受賞歴あり。FP技能士2級。ただいま日本百名山挑戦中! https://mondenseiko.net/