8坪の狭小店ながら月商300万円。三鷹『おでん都』の時代に即した店づくり【連載:居酒屋の輪】
繁盛している居酒屋はどこかで必ずつながっている。名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の新しい名店を紹介してもらう連載企画。今回訪れたのは長屋造の建物にスナックの看板がずらり並ぶ三鷹駅北口からすぐの八丁通り。再開発が進む駅前エリアとは打って変わり、昭和の面影を色濃く残した小さな飲み屋街である。
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4坪の空間を最大限に活用したコの字カウンターでふるまう極上おでん
前回登場『おいっちゃ』の野沢泰基さんの行きつけであり「料理の味も人間力も兼ね備えている」と絶賛するのが『おでん都』。ウェブ上でも情報がほとんどない、まさに知る人ぞ知る名店だ。その様子がうかがい知れるのは、平均4.2と高得点を獲得するGoogle MAPの口コミであり、
「おでんが美味しい。出汁割が至高」
「コの字型のカウンターがお店の一体感を生んでいて雰囲気がたまらない」
「店主や店員さんが作る雰囲気、気遣いなどサービス、全て完璧」
「常連がいっぱいで盛り上がってます」
など、料理の味わいだけでなく、店の雰囲気や接客も評判となっている。
「どうしても必要なものだけをパズルのように当てはめたのが現在のお店です」と、内装について説明するのは店主の西岡塁さん。1階4坪という限られたスペースながら、入口周りの壁を取り壊し、コの字カウンターと一体化させることで調理スペースと動線を確保したという。
現在の営業はハイチェアと立席を合わせて10人ほどで満杯になるという1階が中心だが、それでも平均月商は300万円ほど。1階だけで月間250万円の売上は出ているため、坪月商で考えれば60万円超えだ。日曜定休なうえ毎月2〜4回ほどの不定休があることも踏まえると、驚くべき繁盛ぶりである。
「週末は休みたかったので。あえて日曜は閑散とする場所で店舗を探しました」と西岡さんは笑う。
「コロナ禍でのオープンとなりましたが、ここは家賃が月8万円という破格の安さなので大きな不安はありませんでしたね。臨時休業を余儀なくされた期間は店内美化に努め、ビニールカーテンや冷凍庫も新調しました。大変ありがたいことに大勢の方がご来店してくださって、すべり出しから順調だったと思います」
人口の減少と外食比率の低下が予想される中、「広いお店に挑戦するのはリスクが大きく、なかなか上手くいかない時代だから。もしも個人で独立するなら、ここのお店は参考になるはずです」と、おでんを仕込みながら西岡さんは話す。
