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月商200万円のリアル深夜食堂。西麻布『夜寄』に学ぶ「お客さま都合」のワンオペ経営

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カウンターに立ち一人でお店を切り盛りする『夜寄』の店主・友寄 樹さん

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ドラマにもなった、漫画『深夜食堂』をリアルに再現したかのような店が西麻布にある。それが2019年8月5日オープンの『夜寄(よよ)』だ。西麻布の路地裏にある古民家の一階で、「たっちゃん」の愛称で親しまれている店主の友寄 樹さんが、お客の要望に応じて即興で料理とお酒を振る舞う。調理からサービスまでワンオペで行う同店には、連日早い時間から老若男女が集う。10席10坪で月商200万円を売り上げる人気店だ。

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『旬味 森やま』、『西麻布 角屋』の店長を経て30歳で独立

店主の友寄さんが飲食の道に足を踏み入れたのは大学在学中。22歳から2年ほど働いた『旬味 森やま』でのアルバイトがきっかけだった。卒業後は『西麻布 角屋』に入り、24歳になると店長に就任。独立を考えたのは30歳を目前とした頃だ。

「子どもが生まれて働き方を考え直すようになったのと、30歳を機に一人でどれだけ挑戦できるか体力の限界まで一度挑戦してみたいと思ったんです」。そう話す友寄さんが出店の場所に選んだのは、22歳から飲食の仕事をしてきた西麻布だった。

「西麻布というとギラついたイメージがありますが、エリアによって特色が異なるんです。いまお店があるこのエリアは、以前は商店街もあったような場所で下町っぽい温かい雰囲気。昔からの常連さんも多く、お店をやるならこのエリアで店を出したいと物件を探している中で出合ったのがこの古民家でした」

築80年以上というこの古民家は、物件を入手した時点では建築基準法を満たしていなかった。しかし知り合いの建築家や水道工事の仕事を行っていた友寄さんの父親の力添えで、配管工事からリフォームまで行い、開店へと踏み切った。

西麻布交差点の北東の路地裏に立地する『夜寄』には、地元の常連客が連夜集う

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メニューがないのは「お客さま都合」であり、「僕が飽きないため」

『夜寄』にはメニューがない。おばんざいと呼ばれる2分ほどで提供できる惣菜が日替わりでいくつか用意されている以外は、その日の食材に応じて「こういう料理が作れますよ」と友寄さんが提案したり、お客から「今日、〇〇作れる?」なんて会話でオーダーが入る。このようなコンセプトに至った理由について、友寄さんは以下のように明かす。

「一杯飲んで帰ってもいいし、ご飯も食べられる場所が西麻布に必要だと思ったんです。でも食べたいものって、人によってメニューも違えば味も違う。カフェのような感覚で毎日来店してくださる方もとても多くて、そうなるとメニューにある料理だけだとつまらないじゃないですか。それで突き詰めたのは『お客さま都合』。それと、一人でお店をやっているからこそ僕が飽きないこと。当初『西麻布のお母さんになりたい』ってみんなに話していたんですが、冗談みたいな本気で。お客さまに『今日どんなご飯あるの?』と気さくに話しかけてもらえるような店づくりをしたかったんですよ」

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。