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月商200万円のリアル深夜食堂。西麻布『夜寄』に学ぶ「お客さま都合」のワンオペ経営

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糸島産の柚子胡椒とレモン、オリーブオイルで和えた「アメーラトマトとクレソン、タコのサラダ」(左)と「ちぢみほうれん草の白和え」(右)、芋焼酎「大和桜 SOMETHING NEW」のお湯割り(奥)

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常連客のニーズを把握しながら客単価7,000円、月商200万円を維持

即興で料理を作る場合、メニューの価格設定はどうしているのだろうか。

「二人分の料理を一つのポーションとした基本価格を、それぞれの料理で決めています。一人分ならその半分の金額です。唐揚げのような個数換算のものは1個300円というように個数単位で値段を決め、1.5個欲しいと言われた場合は端数繰上げで2個分の値段に設定します」

ワンオペ経営のコツ、心構えを尋ねると「経営に関しては、あまり上手ではないのですが」と謙遜しつつ、「自己責任を原動力にして、自己表現を最大限に楽しむことですかね」と友寄氏。

「常連の方をはじめ、何度か来ていただいているお客さまに関しては、それぞれのニーズを早めに掴み、2〜3日の仕入れと調理の流れをシミュレーションして、ロスを削いでいく感じです。ワンオペですと売上から固定費、原価を引いて利益になるというシンプルな構造になりますので」

現在、『夜寄』は1日約8万円、1か月約25日営業で月商約200万円を売り上げる。客単価は約7,000円。ある程度常連の好みや食べたい量、飲みたい量を把握している友寄さんは、お客がご飯まで食べてそれなりに飲んで7,000円に収まるように調整し、料理を出しているという。

「昔『1人で月100万円を売れば一人前のサービスマンだ』と教えられたんです。以前いたお店が二人で切り盛りしていたお店だったので、一人減った分も頑張りたいから一人で200万円を目標にしていました。2019年のオープンから半年過ぎにはコロナ禍になってしまったため、大変な時期が続きましたが、2023年には月商200万円台で落ち着くようになりました」

ビールやサワーのほか日本酒は常時30〜40種類を揃え、焼酎やナチュールワインなど幅広い酒類を扱う。お燗をつけてもらうことも可能だ

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赤ちゃんから親まで楽しめる宅配サービスなど、中食事業も視野に

最後に『夜寄』の今後、また友寄さん自身の展望を尋ねてみた。

「飲食店のお客さまは人に付いてくると言ってもいいように思うのですが、ワンオペですとこの色が強く出てしまい、これからの展開が難しくなることは課題かもしれません。自分1人で2店舗の運営は無理ですし、歳をとると体力的な問題もあります。この辺りをクリアにして展開を考えることが課題です」

一方で、中食事業にも興味があるという。

「うちの味を家庭でも楽しんでもらえるような店舗展開が出来たらと考えています。余談かもしれませんが、自分が2児の父親ですので、子育てをしながらの食事作りの大変さは理解しています。そんな子育て世代の方々のために、赤ちゃんから親まで楽しめる宅配サービスなどを展開していこうかとも考えています」

実際、取材日には、知り合いの保育士の方々に向けた20人分の弁当のオーダーを受けており、すでに試験的な取り組みが始まっていた。

「お正月はどうしてたの?」「〇〇に行ってたんですよ」「〇〇さん、今日は麻婆豆腐ありますよ」「明太子あるけど、白米に乗せて食べます?」そういった会話が店内を飛び交う。ワンオペの工夫はありつつも、料理やお酒の質の高さ、気さくで優しいたっちゃんの人柄が、世代を超えた多くの常連を引き付けているのだと感じた。

『夜寄(よよ)』
住所/東京都港区西麻布1-12-13
電話番号/03-6438-9183
営業時間/18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日/日曜
席数/10

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。