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「飲酒ガイドライン」発表から1か月、飲食店への影響は? 9割が酒の提供に「変化なし」

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2024年2月に厚生労働省が発表した「飲酒ガイドライン」を受けて、飲食店ドットコムを運営する株式会社シンクロ・フードは飲食店へアンケート調査を行った。消費者の“酒離れ”とともに、ノンアル飲料・低アルコール飲料の需要が増加すると予想されていたが、実際に飲食店ではどのような影響があったのだろうか。

■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:404名
調査期間:2024年3月8日~2024年3月18日
調査方法:インターネット調査
※詳しい調査結果はこちらから

■回答者について
本調査の回答者は、2店舗以内の運営店舗が82.4%、また東京にある飲食店は52.5%(首都圏では66.7%)となっており、これらの背景が結果に影響したと推測される。

飲酒ガイドライン、飲食店の8割が「意識せず」。9割で酒の提供に「変化なし」

今年2月、厚生労働省が「飲酒ガイドライン」を発表した。生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日あたりの純アルコール量を男性は40g以上、女性は20g以上と定義している。純アルコール量20gの目安は、ビールであれば中瓶1本ほど、日本酒では1合ほどだ。

そこでまず、回答者全員を対象に飲酒ガイドラインについてどう感じているか尋ねたところ「特に何も思わなかった」(45.3%)が最も多い回答という結果に。さらに、「発表された内容を知らなかった」(35.6%)という回答が続き、ガイドライン自体に関心がない、情報を知らない、といった飲食店が圧倒的に多かった。

▼質問:厚労省が発表した「飲酒ガイドライン」に対して、どう思いますか?(N=404)

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この回答を選択した理由を聞くと、「自分の体にあった量を適度に飲む分には、害は無さそうという方が多そう。これからも、適度に飲む人は飲むし、飲まない人は飲まないと思う」(千葉県/居酒屋・ダイニングバー)という意見や、「しっかりとした周知がなされていないから」(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー)という理由で、ガイドラインの発表が酒類の注文に影響しないと予測する声が上がった。

事実、酒類を提供する飲食店を対象に飲食ガイドラインの発表後、酒類の注文量・注文内容に変化があったか尋ねると、87.3%が「特に変化はない」と回答した。ガイドライン発表からおよそ1か月経ったが、意識・実態ともに影響はほとんど表れていない。

その一方で飲酒ガイドラインの発表は「リスク・脅威だと感じた」という回答も15.8%いる。「ガイドラインで定義された一日の適正飲酒量は少なく感じる。今後、ノンアルコールドリンクの充実を検討する必要があると思う」(愛知県/その他)といったように、酒離れの懸念からノンアルや低アルコールドリンクの充実を検討する声が挙がった。

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ノンアル&低アルの注文は2割が増加。8割が積極性をみせる

ノンアルまたは低アル飲料を「提供している」と回答した飲食店に対し、直近1年間でその注文は増えたか尋ねると、22.8%が「増えた」と回答した。「変わらない」(74.9%)店舗が大半であるものの、酒以外のドリンク注文を増やす店舗が出てきていることは、大きな変化といえる。

▼質問:直近1年間でノンアル飲料・低アルコール飲料の注文量の変化は?(N=334)

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またすべての回答者に、ノンアル・低アル飲料の今後の方針について尋ねると、前向きな回答が約8割にも上った。中長期的な目線にはなるが、ノンアル・低アル飲料を提供する飲食店は増えていくだろう。

▼質問:ノンアルコール・低アルコール飲料の今後の提供方針は?(N=404)

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ノンアル・低アル飲料の提供に前向きな飲食店にその理由を聞くと、「ノンアルペアリングなどで飲まない方が楽しめるメニューを提案し、ノンアル客の単価をあげたいから」(東京都/イタリア料理)といった、新たなニーズ開拓に活路を見出した意見が印象的だ。また酒を飲まない人への配慮として「グループで来店した場合の選択肢と必要だから」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)という時代の変化を捉えた意見もあった。

その一方でノンアル・低アル飲料の提供を、進んで行わない飲食店からは、「まだそれほどニーズを感じない」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)といった、現場の温度感を反映した意見が挙げられた。

「飲酒ガイドライン」が発表されたからといって、客の酒控えが急加速したようには見られないが、飲食店経営者の意識として、ノンアル・低アル飲料の提供に関心が高まっていることがわかる。これまで飲まなかった層からドリンク注文を取れることは、むしろチャンスとも考えられる。酒を飲む人にも飲まない人にも、楽しむ選択肢を増やすことは、日本の外食産業をますます面白くすることにつながるだろう。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。