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ガストや大阪王将、物価上昇による「インフレ手当」を支給。背景には深刻な人手不足も

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2022年からの物価上昇を背景に、従業員の生活費を補助する目的で「インフレ手当」を支給する企業が増えてきている。外食業界でも同様に、こうした手当の支給を行う企業がいくつか出てきた。

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イートアンド、毎月の給与に8,000円上乗せ。すかいらーくも最大12万円を支給。

総務省が発表した2023年1月の消費者物価指数は、前年同月比で4.3%上昇した(総合指数)。この物価上昇は円安や資源高が影響しており、1981年9月以来、41年4か月ぶりの上昇率となっている。

このような状況を背景に、インフレ手当を支給する企業が増えてきている。株式会社エデンレッドジャパンが2022年12月に行った「ビジネスパーソンに聞く『インフレ手当』実態調査」では、インフレ手当の支給率は10.2%、認知率は62.8%に上った。

外食業界も例外ではない。『大阪王将』などを展開する株式会社イートアンドホールディングスは、2022年10月支給分の給与から「生活応援特別手当」を支給。従業員の生活基盤を守り、業務に集中して働けるよう、正社員・契約社員の毎月の給与に一律8,000円を上乗せして支給している。

また1月31日、『ガスト』『バーミヤン』などを展開する外食大手の株式会社すかいらーくホールディングスは、特別一時金として「インフレ手当」を支給すると発表した。2023年3月支給の給与に合わせて、正社員・嘱託社員に5~12万円を支給。子育て世帯には子供の人数に応じた支援を行うとしている。また、社会保険加入のパート・アルバイトには一律1万円を支給する。

一方、「手当」という形ではないが、『ロイヤルホスト』『てんや』などを展開するロイヤルホールディングス株式会社は、2023年7月から全社員約1,830人を対象に、月額平均6.5%の賃上げを実施すると発表。同社の阿部正孝社長によると、「外食産業が回復してきたことで人手が足りなくなっており、人への投資をすることでサービス向上へつなげたい」という意向があるようだ。

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人への投資が、未来の外食産業を支える

やや主旨は異なるが、2022年12月にはアサヒビール株式会社が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた飲食店の支援を目的として、社員約3,200人に対し外食支援金3万円を支給したことも話題になった。新規感染者数の減少に加えてこうした他業種からの応援もあり、外食業は再び息を吹き返しつつある。同時に改めて浮き彫りになるのは、深刻な人手不足の問題だ。

ロイヤルホールディングス・阿部社長の発言にもあるように、外食企業がインフレ手当を支給する根本的な意図は、外食企業における人手不足への対策だろう。物価上昇がいつまで続くのか、先の見えにくい状況ではあるが、「人(従業員)への投資」という意識は、企業規模にかかわらず今後より重要になってくるはずだ。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com