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東京電力の値上げ発表に反対相次ぐ。約8割の飲食店が電気代の高騰を実感する調査結果に

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画像素材:PIXTA

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4月13日、東京電力が国に申請している電気料金(家庭向けなどの規制料金)の値上げについて、一般の利用者から意見を聞く公聴会が行われ、意見陳述人からは反対意見が相次いだ。こうしたなか、飲食店ドットコムでは会員を対象に「国内における食品やその他の価格高騰」についてのアンケートを実施した。今回は光熱費の値上げに対する回答の一部と、価格転嫁などに関する飲食店の生の声を中心に紹介していく。

■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:374
調査期間:2023年3月6日~2023年3月13日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち72.5%が1店舗のみを運営している。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は48.7%(首都圏の飲食店の割合は66.7%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

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値上げ幅は申請当初から圧縮されるも、不十分との声

東京電力が国に申請している6月からの家庭向け規制料金の値上げについて、公聴会が行われた。東京電力は値上げ率を申請当初の平均29.3%から、経済産業省から再計算を求められ平均17.6%まで圧縮した経緯があるなかでの開催となった。

参加した一般の意見陳述人からは、「値上げの正当性があるか不十分である」「経営効率化が最大限行われていると思えない」「稼働していない原発の固定費を支払うのはなぜか」といった反対意見が相次いだ。まだ圧縮できる余地があるという声も上がっており、経済産業省はこれらの意見を参考に審査を進める方針だという。

物価高騰の影響を感じている飲食店の79.8%が、電気代について言及

飲食店ドットコムは、2023年3月6日~13日、飲食店ドットコム会員を対象に「国内における食品やその他の価格高騰」についてのアンケートを実施した。

「物価高騰の影響を感じているか?」の問いには「とても実感している」が81.3%で8割以上を占めた。「やや実感している(16.8%)」と合わせると98.1%に到達し、物価高騰の影響は飲食業界全体に広がっていることが浮き彫りになった。

飲食店リサーチ「国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート」より

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次に「主にどのような食品に対して、物価高騰の影響を感じているか?」と尋ねると、最も多かったのが「電気(79.8%)」で、以下は「食用油(73.3%)」、「ガス(60.8%)」と続いた。

飲食店リサーチ「国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート」より

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飲食店では、大型の業務用冷蔵庫、店内を照らす照明設備、快適さを保つための空調などが欠かせず、水道光熱費のうち、電気代が占める割合は他業種に比べ高い。電気料金の値上げは経営状況の悪化に直結するため、懸念材料になっているといえそうだ。

電気代高騰の実感に対し、取り組みを行っている飲食店は少ない

続いて「物価高騰による店舗への影響を抑えるための取り組み」について聞いた。その結果、「既存メニューの値上げ」が1番多く、67.9%。2番目に多かったのが「仕込み、仕入れ過多等による食材ロスの削減」で43.3%。

飲食店リサーチ「国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート」より

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対して「水道光熱費の削減」は27.3%と、エネルギー費の高騰を実感しつつも、思うように対策を講じられていない現状が見えてくる。取り組みに関してのフリーワード回答では「新電力が軒並み高いので、プロパーに戻した」「ガスに一本化した」など、エネルギー会社の選定に関するものや、「使わないものはすぐ消す」「余分なスポットライトの削減」「閉店時間を早めた」「オーブンはオーダーが入ってからつける」など、細かな対策が目立った。

価格転嫁も72.8%の飲食店が「客足に変化ない」と回答

物価高騰への取り組みとして「既存メニューの値上げ」と回答した店舗に値上げ幅を尋ねたところ、「6%~10%」が48.4%で最多。「11~15%」が27.2%と続いた。

飲食店リサーチ「国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート」より

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また、「価格転嫁後、客足に変化はあったか」と尋ねると、72.8%が「変化はない」と回答。食材の高騰も続く中、メニューの値上げは消費者の理解を得やすくなっているようだ。

飲食店リサーチ「国内における食品やその他の価格高騰についてのアンケート」より

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「安値思考」からの脱却が飲食業界の発展のカギか

今回のアンケートでは、「現代の外食文化における『低価格であることを良しとする価値観(安値思考)』について、経営者としての立場から率直な意見」も求めた。いくつか抜粋して紹介する。

・海外とくらべ、日本の外食は安すぎます。価値のあるものを相応の価格で提供することを全体で考えないといけないと思います(埼玉県/バー/1店舗)
・競争原理からいえば価格競争の末に安くなることはよい。しかし、安くするために何を削るかといえば原価と人件費しか削れるところがない。人件費を削ればよい人材は減り、時間が経つほど業界全体が劣化する。外食業界だけで済んでいたことが他の産業にまで影響していき、やがて国全体が衰退する(東京都/カフェ/1店舗)
・当然の価値観だと考えます。ただし企業としては、ただ単に安価な商品を提供するのではなく、顧客に安価だと感じてもらえるような商品作りをすることが責務だと考えています (大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

経営者の意見には、「安値思考の『質』」を問うものが目立った。安くて美味しい日本の外食文化を受け入れつつも、自社の経営のみならず、中長期的な飲食業界の発展を視野に入れ、疑問視する声が多くあがっている。

今回のアンケート結果から、物価高騰の流れを受けさまざまな経営課題と向き合おうとする経営者の姿が見えてきた。各店舗での取り組みと、業界全体での付加価値づくりなどを両輪としていくことが求められそうだ。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」