飲食店ドットコムのサービス

個人経営の飲食店を支えるインボイス制度の「負担軽減措置」。納税額は売上税額の2割に

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

画像素材:PIXTA

画像を見る

2023年10月から導入が始まる「適格請求書等保存方式」、いわゆる「インボイス制度」。適格請求書発行事業者となるためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を事前に税務署へ提出する必要がある。ここでは現在の登録状況とともに、期日までに登録を検討したい飲食店事業者の特徴や優遇措置の内容をまとめた。

【注目記事】収益を生む絶妙なメニュー構成! 福岡の“繁盛”立ち飲み屋『ネオメグスタ』の店づくり

法人登録率97.1%。個人事業主は3月に駆け込み、登録率上昇

東京商工リサーチのレポートによると、当初の申請期限だった2023年3月末までにインボイスの登録申請を行った事業者は累計268万件に達した。そのうち法人の登録率は97.1%、個人事業主全体の登録率は43.2%、個人事業主のうち課税事業者の登録者数は77.8%に到達したという(登録率はいずれも2016年「経済センサス」の集計数に基づく)。

法人に比べて登録数が伸び悩んでいた個人事業主だが、3月単月で法人の2倍を超える18万1,032件の登録があり、10月の制度施行にあわせてインボイス発行事業者になるための期限だった、3月に駆け込み対応した模様だ。課税売上高1,000万円以下の免税事業者でも、インボイス制度導入を機に課税事業者へ移行する動きが進んでおり、遅れていた登録件数を引き上げつつある。登録申請期限は同年9月末まで延長され、小規模事業者への負担軽減措置の実施も決定した。まだ登録申請していない飲食店オーナーはこの機会に再度検討してみよう。

画像素材:PIXTA

画像を見る

接待利用メインの飲食店は、免税事業者でも登録の検討を

改めてインボイス制度とは、2023年10月から施行される消費税の税制度改正である。今後は消費税の仕入税額控除をするために、適格請求書発行事業者が発行する「適格請求書(インボイス)」が必要になる。インボイスを発行するには事前登録が必要だが、その登録申請ができるのは課税事業者のみである。

登録は任意だが、果たして個人経営の飲食店も登録が必要だろうか。まず課税売上高が1,000万円以上の課税事業者の場合は、ぜひ登録申請を行いたい。問題は課税売上高が1,000万円以下の免税事業者の場合だ。インボイス登録をするために、これまで受けていた免税というメリット(益税)を捨てて、課税事業者にならなければならないからだ。果たして免税事業者である、個人経営の飲食店は登録するべきなのか。

もし貴店が接待目的や商談の場としてよく利用される店ならば、インボイスを発行できないと、お客さまは接待費の税額控除を受けられない。つまり税負担が大きくなるため、来店を控えられてしまう可能性がある。要するに「企業顧客をつなぎとめるため、インボイス発行事業者になり消費税を納付するか」それとも「顧客を失う可能性はあるが免税のメリットをとるか」という判断軸での検討となる。ただ、これまで免税優遇されていた小規模事業者にとって、消費税納税の義務は経営に大きなダメージを生む。この負担軽減策として、小規模事業者向けの特別措置が決定したので、あわせて紹介したい。

画像素材:PIXTA

画像を見る

小規模事業者向けに優遇措置施行。10月の施行開始に備えて9月末までの登録を

■納税額は2割に軽減
免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、納税額は売上税額の2割に軽減できる。例えば、課税売上高が700万円(税額70万円)、経費150万円(税額15万円)のモデルケースでは、通常納税額は実額計算では55万円、簡易課税では35万円となるが、特例を受ければ14万円に据え置かれる(税額70万円×2割=14万円)。対象期間は2026年の申告まで(個人事業主の場合)だが、上記の判断軸と照らし合わせて検討したい。

■持続化補助金の上限額、50万円上乗せ
免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、持続化補助金の補助上限が一律50万円加算される。税理士相談費用、機材導入、広告費、開発費などが補助対象となり、事業加速に生かせるかもしれない。

10月のインボイス制度施行と同時にインボイス発行をスタートするには、当初3月末までに事前登録をする必要があったが、4月以降の登録申請でも受け付けられることになった。上記の負担軽減策も考慮して、改めてインボイス登録申請を検討してほしい。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。