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コース料理を軸に坪月商47万円を売る『神泉たつ』。具現化された「居酒屋以上、割烹未満」

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店主の三木達也氏。一見すると強面だが、実はユーモラスというギャップがお客の心を和ませる

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夜の客単価が1万円というミドルアッパーの居酒屋ながら、2022年1月のオープン直後からずば抜けた集客力を発揮しているのが『神泉たつ』だ。8.5坪10席の規模で、月商は400万円。店主の三木達也氏に「居酒屋以上、割烹未満」という業態コンセプトの狙いとヒットの要因についてうかがった。

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2022年1月のオープン直後から繁盛店の仲間入りを果たす

東京・神泉は、大繁華街の渋谷に隣接しながら落ち着いた街並みが広がるエリア。道玄坂から旧山手通りに抜ける「裏渋谷通り」を中心にハイクオリティな飲食店が軒を連ねている。話題店も相次いでオープンしており、そのうちの1店が『神泉たつ』だ。

店主の三木達也氏は、東京都内に居酒屋など8店の飲食店を展開する株式会社ブラボー・ピープルズに入社。その後、三軒茶屋、下北沢で繁盛居酒屋を次々と輩出している株式会社2TAPSでキャリアを積んだ。かつて美容師専門学校にも通っていた三木氏は、専門学校時代の同級生だった長谷川卓也氏とともに、2022年1月『神泉たつ』をオープン。30~50代の外食感度の高い層の支持をがっちり掴み取り、すぐさま繁盛店の仲間入りを果たした。店舗規模は8.5坪10席。客単価は昼1,400円、夜1万円で、月商400万円を売り上げている。

『神泉たつ』は「居酒屋以上、割烹未満」をコンセプトにしている。その業態づくりの核になっているのが、おまかせコースだ。フードメニューの主力は、先付けから甘味まで10品で構成される「おまかせ十品」(8,000円)。刺身7品、前菜13品などのアラカルトメニュー35品も用意しているが、おまかせコースを注文するお客が全体の7割を占めるという。

フードのアラカルトメニューは単品で35品をラインアップ。中心価格帯は1,000~1,800円だが、2軒目利用のお客を吸引するため、一律660円のおつまみメニュー10品も用意している

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「おまかせは日本料理ならではのコース料理といえます。旬の食材を用いた料理を軸にコースを組み立て、お客様の好みに合わせて臨機応変に料理を入れ替えることもできる。また、コース料理はオペレーション効率が高いですから、おまかせコースに特化することによって、料理の仕込みから仕上げまで自分ひとりの手で完結させる店を作れるだろうと考えました」

「割烹料理店のように敷居を高くしたくなかった」

三木氏はおまかせコースをメインにした狙いについて、先述のように説明するが、一方で「割烹料理店のように敷居を高くしたくなかった」と言う。

「目指したのは、お客様が肩肘を張らずにおまかせコースの料理を楽しんでいただける店。そのため業態開発では、割烹クオリティの料理を提供しながら、どうやって店を居酒屋化するかというポイントを重視しました」

三木氏が言う居酒屋化のキーとして、まず挙げられるのが価格設定だ。その試行錯誤の足跡は、「おまかせ十品」の価格変遷から見てとることができる。オープン時は6,000円でスタートしたが、2022年5月には6,600円、さらに2022年12月には現行の8,000円に価格を変更した。

「おまかせコースでたっぷり飲んでも、支払い額が1万円以内に収まる。これが6,000円という値付けの意図でしたが、食材原価の高騰もあり、品質水準を落とさずに臨機応変なおまかせコースを組み立てるのが難しくなってしまいました。リピート客が増え、より高品質な料理ニーズが高まってきたこともあり、価格を8,000円に切り替えることにしたのです」(三木氏)

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。