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日本酒×イタリアンで坪月商40万円。門前仲町『酒とビストロ KARASU』の戦略

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メイン客層は赤井氏の年齢である35歳を基準に上下10歳くらい。6対4で女性客が多い

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2号店の立ち飲みは坪月商50万円を達成。3号店は、さらに日本酒のマーケットを広げる店に

『酒とビストロ KARASU』のある門前仲町は、実は赤井氏にとってはまったく土地勘のない場所だった。だが開業してみると「いい意味で想像を裏切られた」と赤井氏。

「下町の印象があり年齢層が高いのではと思っていましたが、若い人、食への感度が高い人が多く、うちのような尖った業態も受け入れてくれました」

2号店の『KARASU no SU』は、『アボットチョイス』時代の後輩・安見佳大氏が独立志望であったことから、一緒にゼロから店を立ち上げてみないかと声をかけたのが開業のきっかけだ。狭小物件であったこともあり、業態は赤井氏が以前からやってみたかった立ち飲み店とした。直後にパンデミックに見舞われたものの、「外出を控える中、自宅の近所でちょっと外食に行こう、という立ち位置の店になれたので、売上は良かった」と話す。

専門性の高いお酒や高単価のお酒のニーズもあり、ワンオペ営業・5坪で月商250万円という実績を出していたが、店長の独立により閉店。ちなみに当時の店長・安見佳大氏は現在、森下で『BistroPub UTAKATA』を運営している。

3号店の『KARASU no ONGAESHI』は、一見すると日本酒専門店らしからぬ店構え(写真提供:株式会社マルサラ)

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清澄白河での地域密着の店づくりで得た成功経験をもとに、次に着目したのが蔵前だ。昼間の人口が多く、夜は仕事帰りの会社員も多い。コロナ禍で落ち込んだ民泊にも人が戻りつつあり、将来性もあると読んだ。そうして開業した3号店『KARASU no ONGAESHI』は、天井高が約4メートルの開放感のある空間で、18坪・30席と規模も最大に。アフターコロナのいまは5人以上の宴会が一気に増えたため、貸し切り需要の受け皿ともなっている。

チーズや生ハムなど、ワインにも日本酒にも合う料理が店の楽しみ方を広げている(写真提供:株式会社マルサラ)

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日本酒業態は、人にファンがつく。人材育成を強化しながら新たな夢の実現へ

1号店は日本酒専門店からスタートし、2号店ではクラフトビールや日本ワイン、クラフトジンなどを含む「日本のお酒を応援する」ことをコンセプトに掲げ、お客のニーズを掴んだ。さらに日本酒のマーケットでも、和食以外のさまざまな料理とのペアリングが当たり前になり、ワインと同様、酸のあるお酒が受け入れられるようになってきた。

そこで3号店は、日本酒と日本ワインを核に「肉バル」として開業。だが営業するうちに「本当に美味しいものをコストパフォーマンス高く提供したい」との思いが募り、現在はナチュールワインと日本酒を中心にしたイタリアン酒場として営業している。

「3店舗目は人材が育つ前に開業してしまったので、正直、コンセプトは迷走していた部分もあります。コロナ禍を経験して、お酒に関係なく売れる業態をつくりたいとジェラート専門店も立ち上げましたが、ここもまだ課題は山積みです。複数店舗を展開しての最大の学びは、人材の大切さを痛感したこと。とりわけ日本酒業態は、店よりも人にファンがつくので、今後は社内で人を育てる環境を整えたいと考え、2024年度は採用、育成、定着の強化を目標としています」と赤井氏。同時に、煩雑化してしまっているオペレーションの見直しも図っているという。「門前仲町で大衆酒場をやる」という夢の実現も、そう遠い日のことではなさそうだ。

『酒とビストロ KARASU』
住所/東京都江東区富岡1-9-3
電話番号/03-5809-9961
営業時間/11:30〜14:00、15:30〜23:00(ランチ営業のない日は15:00~)
定休日/水・木(祝日は営業)
席数/9坪・16席
https://www.karasu-asobiba.com/

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/