ヒットメーカーの新店、溜池山王『溜池カドヤ』がとった「ライバルと戦わない」戦略
ライバルが少ないからこそ基本に忠実に、盤石な営業を目指す
「6月のオープンから約1か月、売上も順調です。おかげさまで、想定通りの営業ができていますね。元の蕎麦屋から引き続き運営しているので、ランチタイムの客足は読めていましたが、夜の売上は想像よりも伸びていますよ」
そう語る大谷氏だが、集客に関しては特別なことはしておらず、「当たり前なことを当たり前に実行しているだけ」とのこと。
「店を清潔に保って、明るく元気よく接客することは徹底しています。道路側が窓になっていて店内が見えるので、照明を明るめにして、店に入りやすいと感じてもらえることも意識しています」
ビジネスパーソンが多いという場所柄、癒やされる空間であることも重視している。『溜池カドヤ』ではホールスタッフが割烹着を着用しているが、これも来店客にほっと一息ついてほしいという思いから。
スタッフは同社が運営している他店から異動してきたケースが多いため、渋谷のカフェで働いているような若くてオシャレな女性が中心だ。彼女らが割烹着を着て接客する姿が、来店客にいい意味でのギャップを与えているという。
「溜池山王っぽくない雰囲気が面白いと受け取られ、お客様にウケているようです。あえてその土地にはあまりいないタイプのスタッフを配置するという選択肢をとれるのも、他店舗を展開している強みと言えるかもしれません」
メニューは和食経験が豊富な店長・嶋田氏が中心となってアイデア出しと試食を重ね、決定したという。「くらげの出汁茶漬け」(税込550円)、「季節のなめろう」(同)、「爆弾コロッケ」(税込660円)、「ネギだく季節のカルパッチョ」(同)など、酒が進むメニューが並ぶ。
「メニュー決めでも、僕は『居酒屋だからポテサラは欲しいよね』といった感じでたまに口出しする程度でした。彼の腕を全面的に信頼しているからこそできることですね。得意なフィールドで自由に腕をふるってもらいつつ、いい食材が入れば日替わりメニュー的なものも出すようにしています」
【注目記事】自由が丘に“立ち飲み”ブームを。『ニショク』など人気5店舗がスタンプラリー開催
あえて長期的な計画は立てず、目の前のことを一つひとつ丁寧に積み重ねていく
自分の店に愛着を持ちながらも、過度なこだわりを捨て、合理的な選択に基づいた店舗運営を徹底している印象の大谷氏。そんな彼は、『溜池カドヤ』の今後の展望についてどう考えているのだろうか。
「僕は性格的に長期的な計画が立てられないので、『一つひとつを丁寧にやっていく』を積み重ねていくしかないと思っています。このまま基本に忠実にいい店づくりを進めれば、リピーターもさらに増えるはず。売上はオープンから順調に右肩上がりになっていますし、ライバルが少ないエリアを選んでもいるので、あとは着実にやっていくだけですね」
申し分のない立地で、窓の外から店内を横目で見る通行人は多い。フードメニューもリーズナブルながらクオリティは高く、スタッフも明るい。飲食店が成功するための基礎が集約されている『溜池カドヤ』なら、疲れたビジネスパーソンのオアシスとして、ここ溜池山王にしっかりと根付くはずだ。
『溜池カドヤ』
住所/東京都港区赤坂1-5-15 1F
電話番号/03-6277-6640
営業時間/11:00~15:00、17:00~23:00
定休日/土日祝
席数/テーブル約30席、カウンター・テラス約10席(レイアウト変更の場合あり)

この記事のご感想をお聞かせください