2024年外食トレンド「中華×○○」など7業態をふり返る。2025年の飲食業界動向も予測
【2024年トレンド業態4】「居酒屋以上、割烹未満」のちょっといい居酒屋
2023年11月に「居酒屋以上、割烹未満」をコンセプトに掲げる『神泉たつ』を紹介したが、同じようなコンセプトを掲げる繁盛店が2024年にも多数登場している。共通点としては客単価6,000円~8,000円のミドルアッパー層を狙った業態で、和食をベースとしながらも洋食やエスニック、中華のエッセンスを加えていたり、〆に土鍋ご飯や寿司を用意していたり、ジャパニーズクラフトの日本酒や焼酎、ジンやウイスキーを豊富に取り揃えていることが挙げられる。一人ひとりが食べやすかったり、たくさんの種類をちょっとずつ食べたいというお客のニーズを捉え、小皿料理に特化したお店も出てきた。店舗のレイアウトとしては、オープンキッチンのカウンター仕様が多く、店のスタッフと客との距離が近いのも特徴だろう。
大人っぽさを意識した「ちょっといい居酒屋」を標榜する渋谷『うゆう』もその一つ。恵比寿の高級店『魚見茶寮』のオーナーシェフ・御幸佑亮氏が手掛け、採算度外視の「お造り」や、仕上げのパフォーマンスが面白い「炭炙りさば棒鮨」などで客の心を掴んでいる。
2TAPSが虎ノ門ヒルズステーションタワーに出店した『虎ノ門 楽㐂(らっき)』は、日本の職人の文化をフィーチャーしつつ、スタイルは新しくした “NEXT JAPAN”がコンセプト。洋のエッセンスを加えた「楽㐂酒菜盛り」や江戸前の寿司屋で修業した職人が目の前で握ってくれる寿司が名物だ。
自由が丘『おゆげ』は、蒸し料理と土鍋ごはんを二大料理に掲げ、空中階でも坪月商37万円を達成している。
東北沢『ランタンはなれ』は、代々木上原のビストロ『メゾン サンカントサンク』などで知られるフレンチシェフの丸山智博氏が手掛ける「一歩先の居酒屋」を目指した新業態。「鶏のねぎま揚げ すだち」や、「サルシッチャの豚キムチ ネパール胡椒」、「もつ煮込み グリーンアリッサ」など和洋中エスニックの幅広い料理ジャンルを網羅した創作料理がメニューに並ぶ。
学芸大学の『びゃく』などを運営するマルホの新店『渋谷きんぼし』(2024年11月1日より店名を変更)は、秋田伝統野菜や希少な山菜を使ったおばんざいと野菜のしゃぶしゃぶ、わっぱめしが名物だ。野菜を主軸に“オトナ”が愉しめる酒場を展開しているお店としては『YAOYA TOKYO』も挙げられる。
【2024年トレンド業態5】炉端焼き&炭火焼き酒場
2024年は食材を直火で焼き上げる、原始焼きを含む炭火焼きや、囲炉裏の端で食材を焼く炉端焼きをウリとするお店も多かった。メニューのラインアップやターゲット層、店づくりにおいては、前述した「ちょっといい居酒屋」と重なる部分もある。
原始焼きと鮨を二本柱とする『炭火焼き リリー』は2023年11月に1号店を渋谷にオープンしたばかりだが、2024年10月に新宿店をオープンさせるなど、破竹の勢いだ。渋谷店は坪月商57万円を弾き出しており、新宿店もオープン初月から坪月商40万円超えを達成している。
目黒『炉端と酒 きいと』も、口コミによる集客だけで客単価8,500円、坪月商50万円とかなりの好調ぶりだ。店主の坂上純さんによる原始焼き「秋刀魚の塩焼き」やお造りに、坂上さんのパートナーである中野沙織さんがセレクトする日本酒が合う。

『錦糸町炭火 成る』の「名物!和風魯肉飯」2,800円、「特撰標茶町北村さんの蝦夷鹿肉たたき」2,300円、「原始焼きのどぐろ」9,800円、「削りたて大トロのポテトサラダ」1,200円、「名物!刺身盛り合わせ 5種」1,600円
錦糸町にも炉端焼き&炭火焼き酒場の波が来ている。『ロビン』は、錦糸町で2店舗を展開し20〜30代の若年層でにぎわう。錦糸町で『マグロと炉端 成る』や『マグロスタンダード』を展開する株式会社Pay it Forwardも、2024年8月に原始焼きをウリにした『錦糸町炭火 成る』と焼鳥×ジビエ『焼鶏メジャー』を同時オープンさせている。
【2024年トレンド業態6】仕込みや提供スタイルに工夫を凝らした「ワンオペ店」
人件費の高騰が叫ばれる2024年、創意工夫を凝らしたワンオペの繁盛店も多くみられた。
西麻布の『夜寄(よよ)』は、店主の友寄樹さんがお客の要望に応じて即興で料理とお酒を振る舞う。調理に時間がかかる料理や、特別に仕入れが必要なものは予約オーダー制にして仕込みを徹底し、営業中は簡単な調理で対応できるよう工夫を凝らしている。
おまかせコースのみの提供でワンオペ対応を可能にしたのが、白金の工場跡に開業したレストラン『FRANZ(フランツ)』。フレンチやイタリアンの名店で経験を積んだ福田祐三さんが、調理もサービスも一人で行う。
西荻窪の『肉と蕎麦の店 晴レルヤ』を手掛ける金巻和人氏は、ピーク時には5店を営んでいた経営者だが、2017年に人手不足で事業をいったん整理し、ワンオペ居酒屋に挑戦したという経緯を持つ。「肉×蕎麦」をテーマに仕込み8割、仕上げ2割の料理に絞り、8坪12席で月商240万円を突破している。
『中目酒場「風見堂」』は、客の平均回転数は2.5~3回にもなり、6.9坪17席の狭小店かつワンオペ営業ながら、月商250万円、坪月商35万円と好調だ。一人利用率とリピート率が共に7割で、「ひとり呑みしやすい店」に舵を切ったことが功を奏した。
板橋区中板橋の『1 ROOM COFFEE』は、利益構造改革を徹底的に行ったワンオペのカフェ業態として学ぶべき点が多い。ダイナミックプライシングやサブスクによる会員優待など、個人経営のカフェとしては画期的なビジネスモデルを取り入れ最高月商190万円を記録している。
【2024年トレンド業態7】提供スピードが速い「煮込み&おでん」
仕込みを徹底することで、営業時の調理の手間が軽減される「煮込み」や「おでん」を名物にした繁盛店も2024年は多かった。
おでん居酒屋の『高円寺おつゆ』は看板なし、空中階にもかかわらず坪月商40万円を上げ、予約困難となっている。
『びぃすとろ 汁べゑ』の魂を継ぐ六本木の『おでん屋 ずぶ六』は、黒おでん、本マグロ、魚串がフードの三本柱。オープン9か月で最高月商700万円をマークしている。
西新宿の『炉端とおでん 呼炉凪来』は、お通しのおでん食べ放題を550円で提供。撮影&拡散を見越したキャッチーなポイントづくりを行い、TikTokを中心にSNSでバズり、若い世代の注目を集める超人気店だ。
『酒場つむぎ堂 新宿店』『めしや ヒロキ倶楽部』と立て続けにヒット店を生み出している株式会社LINK STYLEも、恵比寿『ひまり堂』でおでんをフードの柱にして成功を収めている。客単価4,200円で、「第一目標の月商1,000万円突破は固い」と村野氏は自信を覗かせた。
キッチンカーから実店舗出店を遂げた神保町の『煮込み伝次』は、店舗での調理作業を極力軽減。牛すじ煮込みを含む肉系の料理は、キッチンカー時代と同じく『うどん伝次』で調理する工夫がある。
