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20年続く店になる! 老舗店に学ぶ「愛され店舗」への3ステップ

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新たなランドマークの開業が続く2016年。なかでもオープンが間近に迫った新宿「ミライナタワー」と「東急プラザ銀座」には、日本初上陸のレストランがオープンするとあって大変な注目が集まっている。

「ミライナタワー」内の商業施設「ニュウマン」には、ロサンゼルスで人気のナポリピザレストラン『800 Degrees Neapolitan Pizzeria』や、シンガポールで話題のオイスターバー『Oyster Bar wharf』が。そして「東急プラザ銀座」には、オーストラリア発のモダンギリシャレストラン『THE APOLLO』がオープン。もはや“東京で食べられないものはないのでは?”と感じるほど、東京のグルメは成熟感を増してきている。

毎年多くの食トレンドが生まれ話題店がオープンする一方で、昔から変わらない味や佇まいで、時代に左右されることなく根強い人気を誇る長寿店も東京には多数存在する。そこで今回は、都内の長寿店から「長く愛される店になるための秘訣」を探ってみたい。

1、通いやすい価格設定でリピーターを増やす

恵比寿駅近く、懐かしい大衆食堂の佇まいで迎えてくれる『こづち』は、この界隈では古株の定食屋だ。定番の定食メニューがずらりとそろい、そのどれもがボリューム満点で、価格もリーズナブル。小鉢や副菜も豊富なので、カスタマイズして楽しむこともできる。貫禄のあるコの字カウンターから、厨房の手際よい仕事ぶりを眺められるのもこの店の醍醐味だ。

国立駅近く、路地裏にひっそりと佇む『ロージナ茶房』も、長年地元民に愛される名店のひとつだ。喫茶店とはいえ、食事のメニューもしっかりと揃えており、カレーやパスタ、ドリアなど定番の洋食がバリエーション豊かに並ぶ。名物である「ザイカレー」をはじめ、どの料理もかなりのボリュームがあり、価格も良心的。学生街ということもあって、食べ盛りの世代にはありがたい心遣いではないだろうか。

『こづち』や『ロージナ茶房』のように、良心的な価格設定と味のクオリティを兼ね備えるのは簡単な事ではないかもしれないが、街や客層に合った価格設定は、通いたくなる店作りの重要なカギなので慎重に検討したい。またいずれの店も、その街を代表する風格を漂わせているのが特徴といえる。もちろん長年営業していることが大きな理由といえるが、時代の流れにとらわれず粛々とスタイルを貫いてきた結果ともいえるだろう。

2、何度でも足を運びたくなる、名物料理で心をつかむ!

JR浜松町駅の北口を出て、東京タワーに向かって大通りを歩いていくと、道すがら見えてくるのは『秋田屋』の看板だ。居酒屋好きには有名なもつ焼きの老舗で、創業は昭和4年。夕方になると店内はもとより外の立ち飲みスペースも賑わいをみせる。ビジネス街のオアシスといったところだろうか。もつ焼きやもつ煮込みなどの定番メニューもおいしいが、『秋田屋』の名物といえば特製たたき。一人1本限定で、軟骨の食感と青海苔の風味がクセになる逸品だ。

一方、豊富なメニューが客の心をつかむ場合もある。自由が丘の駅近くにある『金田』は、山の手の文化人たちが愛した名店で、創業は昭和11年。酒の肴は100種類を越え、そのどれもがオリジナリティーに富み豊かな味わいが楽しめる。旬のものも日ごとに変わるので、あれこれ試したいと思えば必然的に二度三度と足を運ぶようになる。

何度でも通って食べたいと思わせる名物や、オリジナリティーに富んだ料理は客の心を掴む大切な要素だろう。そしてそれが一時のもので終わらないためには、いつでも変わらない味を提供できるための素材の厳選や、味のクオリティーに対する緊張感など、日々続くルーティンワークがマンネリ化しない努力を続けることが大切ではないだろうか。

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Photo by monoprixgourmet「サン・セバスチャンの居酒屋」

3、本当の居心地の良さを追及する

前述の国立『ロージナ茶房』の創業は昭和29年。店内にはこの店の常連だった作家や画家ゆかりの品、アンティーク家具が配置されていて、どこかノスタルジックな雰囲気が安心感を誘う。思い思いにひとりの時間、そして会話を楽しむ場所として、サービス過剰でないところも喫茶店らしい配慮で、居心地の良さにひと役買っているようだ。

また自由が丘『金田』は、別名「金田酒学校」といわれていることでも有名だ。創業者が客の泥酔や口論を嫌い、ここに来れば酒のマナーが身につくということで、いつしかそう呼ばれるようになったのだとか。そのため、『金田』には“真剣にお酒を楽しみたい”という同士が集うようになり、これがひとつの居心地の良さを形作っている。

いずれの長寿店も、移ろいやすい時代の中で、いくつものトレンドやムーブメントの波を乗り越えて現在まで人気を維持してきた。使い込まれたカウンターや椅子、調度品を見ると、それぞれの店が、その店を愛した人々とともに時を重ねてきたのだということを感じる。個人店が再び注目されている今、いわゆる“行きつけの店”を開拓中の人も少なくないはずだ。今こそ、店を育ててくれるたくさんのファンを獲得し、長寿店の仲間入りを目指したいものだ。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。