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『スープストック』離乳食の無料提供で“炎上”。声明文で明らかにした企業理念を貫く「思い」

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4月25日より、『Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)』が全店で離乳食の無料提供を開始した。これに先駆けツイッターで“離乳食の無料提供”を告知したところ、ネット上で賛否両論のさまざまな意見が寄せられ一時“炎上騒ぎ”となった。一見すると子連れ客に向けた素晴らしいサービスのように思えるが、なぜ炎上するに至ったのか? この騒動の経緯とスープストックトーキョーの対応について改めて紹介する。

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離乳食の無料提供が‟炎上“するまでの経緯

4月18日、同社は公式ツイッターで「離乳食(後期)の無料提供を全店で行うことになりました」とツイート。

同時に公開された公式サイトの記事には、「お客様のライフステージが変わり、ご家族やお子様と一緒にご来店いただく方も増えてきた中、Soup Stock Tokyoとしてお子様の成長を一緒に見届けたい」「お父さんやお母さんと一緒に食事の時間を楽しんでいただきたい」という思いから、離乳食の無料提供を始めたとある。

そもそも、離乳食の無料提供を始めた背景には何があったのか? 同社では2021年1月、一部店舗で離乳食の無料提供を試験導入した。これに対しSNSでの好意的な投稿が広がりを見せ、賛同者が多いことがわかった。また、同社が展開するファミリーレストラン『100本のスプーン』でも、離乳食を無料提供している。こうした離乳食提供に関するサービスの導入を段階的に行い、今回の全店舗でのサービス提供に至ったと考えられる。

発表の2日後には、告知ツイートが1万4,000件以上リツイートされ、取り組みを巡る議論がSNS上で巻き起こった。「うれしい」「ありがたい」といったポジティブな意見が出た一方で、「落ち着かなくなってしまう」「狭い店舗にベビーカーは…」「子ども連れは長居する」といったネガティブな声も上がった。駅構内を中心に店舗を構え、女性がひとりで入店し、静かに食事をするシーンが多く見られる店舗であるためか、子連れ客が増えることを懸念している人が少なからずいることが明らかとなった。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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公式サイトで声明を発表。炎上は収束へ

‟炎上騒ぎ”を受け、スープストックトーキョーは26日、公式サイト上で声明文を発表。そこには、創業当初から「Soup for all!」というスローガンを掲げ、ベジタリアン向けの商品やグルテンフリー商品などを開発し、食におけるバリアフリーの価値観を大切にしてきたこと、そして離乳食の無料提供は「Soup for all!」の取り組みのひとつであり、小さな子ども連れという理由で飲食店での食事をためらう方の助けになればと始めたものであるということが書かれていた。

さらにSNS上の反響を受け、「私たちは、お客様を年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません。私たちは、私たちのスープやサービスに価値を見出していただけるすべての方々の体温をあげていきたいと心から願っています」と加えられていた。この、強い信念を感じさせる声明文に、SNS上では同社を評価する意見が相次ぎ、すでに“炎上”は収束に向かっている。

外食利用シーンや消費者ニーズは刻々と変化する。飲食業界は、その変化にいかに対応するかが課題になる。変えない部分、対応する部分、そこを明確に打ち出した同社の取り組みはひとつの参考例になりそうだ。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」