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飲食店で「食中毒」が起きた際の対応まとめ。加入すべき保険についても解説

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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気温が上がる夏になると、細菌性食中毒が発生しやすくなる。飲食店では、食中毒が発生しないように最大限の注意を払うべきだが、発生してしまった場合は店舗経営にも大きな影響を及ぼしてしまう。今回は、飲食店で食中毒が発生してしまったときの対応について紹介する。

食中毒は夏に増えやすい

食中毒を引き起こす細菌は、気温が高くなると増殖しやすくなるものが多い。細菌の置かれている環境が20℃を超えると増殖が活発になり、最も活発になるのは人間の体温に近い温度になったときだ。そのため、飲食店に限らず、細菌性食中毒は夏に多く発生する。

食中毒の原因となる細菌には、以下のようなものが挙げられる。

・腸管出血性大腸菌(O157、O111など)
・カンピロバクター
・サルモネラ菌
・黄色ブドウ球菌
・腸炎ビブリオ

これらの細菌は、発熱や嘔吐、腹痛、下痢などの症状を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある。いずれも、不十分な衛生管理などが原因のため、細菌性食中毒を発生させないためには、「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌を死滅させる」といった対策が必要になる。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うことも大切だ。

また、それでも食中毒が起こってしまったときのために、保険に加入しておくことも考えておきたい。食中毒が発生してしまってからでは遅いため、早い段階で食中毒への備えを考えておくべきだろう。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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飲食店で食中毒が発生してしまったときにはどう対応する?

では、食中毒が発生してしまったら、飲食店としてはどのように対応したらいいのだろうか。流れに沿って解説する。

1、お客さまへの対応
多くの場合、店舗で食事をしたお客さまからの連絡があって初めて食中毒が発生したことを知ることになる。お客さまから「料理を食べて食中毒になった」と連絡があった場合、下記のことについて確認しておきたい。

・来店日時と来店人数、座った席
・食べた料理
・食中毒の原因と考える料理とその理由
・お客さまの体調
・通院、診察の有無
・病院名と診察結果
・名前と連絡先

お客さまから「店の料理を食べて食中毒になった」と言われても、実際に食中毒なのかどうかは医師が診察によって判断する。また、食中毒だと診断されても何が原因なのかは保健所が特定するため、お客さまへは最大限の配慮をしつつ、冷静に上記について確認する必要があるだろう。

2、店舗での対応
お客さまからの連絡を受けたら、飲食店でも関連する情報を収集しておきたい。保健所からの立入検査が入った場合にも備えて、下記の事項について対応しておこう。

・食中毒を訴えたお客さまが来店した時期の従業員の体調を確認する
・ほかのお客さまからの食中毒の報告がないか確認する
・食中毒の原因が疑われる食材が残っていたら保管しておく

もし、従業員の体調不良やほかのお客さまからの食中毒の報告があった場合は、店舗から保健所に連絡をしたほうがいいだろう。

3、保健所への対応
医師の診察によってお客さまが食中毒だと判明したら、保健所に通報され、保健所からの立入検査が行われる。保健所の立入検査では、ふき取り検査などの店舗の調査が行われ、下記のような内容についてもヒアリングされる。

・食中毒のお客さまが来店した日時
・ほかのお客さまからの食中毒の報告
・体調不良の従業員の有無
・食中毒の原因が疑われる料理とその調理方法
・食材の仕入先
・調理や衛生管理についてのマニュアル
・在庫管理表の内容

4、保健所による処分・指導
立入検査や医師の診断などをもとに、食中毒の原因が店舗にあるかどうかを保健所が判断。店舗が原因だと判断された場合は、保健所による処分や指導が行われる。場合によっては、3日から7日程度の営業停止命令を受けることになる。

5、お客さまへの損害賠償
食中毒の被害にあったお客さまへは、損害賠償金を支払わなければならないケースもある。賠償額は被害の程度にもよるが、賠償額を提示した上で、お客さまとの示談交渉を行うことになる。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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飲食店経営者が加入しておきたい保険

店舗が原因で食中毒が発生してしまったら、数日間の営業停止処分によって売上がなくなってしまうだけでなく、お客さまへの損害賠償にかかるお金も必要になる。食中毒が発生しないようにすることが前提とはいえ、食中毒が発生したときのために、保険に入っておくことも考えておくべきだろう。食中毒が発生した場合に備える保険としては、主に2つある。

■PL保険(生産物賠償責任保険)
PL保険は、製造業者が製造・販売した製品によって他人に被害を与えた場合の損害賠償などを補償する保険だ。飲食店も対象となっており、お客さまへの損害賠償費用だけでなく、営業停止期間の売上についても補償する保険商品もある。

■食中毒見舞金の特約
食中毒見舞金の特約は、食中毒が発生したときに見舞金が支払われるもの。飲食店がすでに加入している保険に加える特約となるため、単独では加入することはできない。こちらも保険会社によって補償の範囲や金額も異なるため、保険会社に内容をしっかり確認しておきたい。

食中毒はどの店舗でも発生する可能性はあるが、従業員全員で食中毒を発生させないという意識を持ち、衛生管理を徹底すれば、そのリスクを下げることはできるだろう。しかし、それでも食中毒が発生してしまったときのために、その対応を理解し、さらには保険にも加入しておくことが大切だ。最悪の事態を避けるためにも、今一度、衛生管理や対策をしっかり見直してほしい。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com