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最低賃金の引き上げ、全国平均で初の1000円超え。飲食店への影響は?

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7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2023年度の「最低賃金」の引き上げを正式決定した。引き上げ額は過去最大の41円。時給の全国平均は1,002円となり、初めて1,000円台に到達した。

最低賃金、全国平均時給1,002円に

最低賃金は国が定める最低限度の賃金のこと。物価の推移や春闘を通じた賃上げの状況、労働者の生活費、企業の賃金支払い能力などを考慮し、毎年、引き上げの目安額が示される。

使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず、これは常用・臨時・パート・アルバイトを問わず、すべての労働者に適用される。また、最低賃金未満の賃金の場合、たとえ使用者と労働者の間で合意があったとしてもその契約は無効となる。

今年度も議論は難航した。物価高を受けて大幅な賃金引き上げを求める労働者側に対し、使用者側は慎重な姿勢を崩さなかったためだ。最終的には、過去最大となる41円の引き上げ、全国平均時給1,002円で折り合った。

1,000円台の目標は、もともとは安倍晋三元首相が2015年に掲げたもの。新型コロナウイルスの影響で1円のみの引き上げの年もあったが、年20~30円の引き上げを継続的に行ってきた結果だ。

目安額は昨年度までは、経済状況に応じて都道府県をA~Dの4区分に分け、区分ごとに示されていた。現在、最低賃金が最も高い東京都と、最も低い青森県や沖縄県などでは200円以上の差がある。23年度からはA~Cの3区分に再編。地域間格差の是正を目指し、Aランクは41円、Bランクは40円、Cランクは39円の引き上げが求められている。

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人手不足の飲食業界、最低賃金の引き上げが重荷に

飲食業界は昨今の原材料価格の高騰に加え、最低賃金の引き上げに伴う人件費の上昇にも向き合わなければならない。FLコストがかさむ分を販売価格に転嫁できればいいが、安易な値上げは客離れの原因にもなる。まずはコストを抑えるための工夫が求められるだろう。

またコロナ禍から回復し客足が戻りつつある今、飲食店の多くが人手不足に直面している。人材確保には時給アップが避けらなくなっており、こうした動きは最低賃金の引き上げによって活発化することが予想される。

さらに、パート・アルバイトには年収が一定額を超えると税負担が生じる「年収の壁」問題があり、時給アップによって労働時間の減少を考えるケースも出てくると考えられる。こうした人材にまつわる課題をクリアしていくためには、業界はもちろん、国の支援も不可欠だという声が上がっている。

今回、初めて最低賃金が全国平均で1,000円台に到達したが、ドイツは約1,750円、フランスは約1,680円と、世界と比較すると日本の最低賃金は決して高くない。飲食店は今後も最低賃金の引き上げが行われることを念頭に、DXの導入で業務効率化を図るなど、生産性の向上に取り組んでいくことが必要不可欠だ。

厚労省の決定事項を参考に、各都道府県が実際の引き上げ額を決めて、秋には地域別最低賃金額が改定される。今後も最低賃金の行方に注意したい。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」