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坪月商40万円『炉端酒場 ぎんぎん』から学ぶ。実直な「居酒屋づくり」と繁盛店に導く「経営論」

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『炉端酒場 ぎんぎん』の店主・石井亮さん

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神楽坂で人気の古民家居酒屋『神楽坂 椿々(カグラザカ チンチン)』の店長などを経て、2019年3月に独立店『炉端酒場 ぎんぎん』を立ち上げた石井亮さん。オープン初月から月商600万円を売り上げ、コロナ禍も順調に乗り越えてきた背景には、修業先である楽コーポレーションでの経験が活きたという。次々と繁盛店オーナーを輩出し「居酒屋の独立道場」とまで言われる所以はどこにあるのか? 今回は石井さんの独立エピソードから、その秘密を探っていきたい。

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江戸川橋駅1b出口から徒歩1分にあるお店

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人気エリアの周囲にこそ理想的な店舗あり!

東京都の文京区と新宿区の境目にある江戸川橋駅。1日の平均乗降人員は約4万5000人、東京メトロ全130駅の中でも73位となかなかの利用者数を誇るが、意外にも駅周辺に個人経営の居酒屋は少ない。近隣の呑兵衛が出かける際には、徒歩圏内にある神楽坂や飯田橋の繁華街まで足を伸ばすパターンが多いのだろう。

「このエリアに住んで15年ほど。今では第2の地元だと思っています」という石井亮さんも、独立を決めた当初は神楽坂や飯田橋で物件を探し回ったという。

石井さんが江戸川橋駅周辺をリサーチした際の資料

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「当時、東京オリンピックの開催後は物価が上がると予想していました。それまでには独立開業にこぎ着けようと半年の期間を設けて物件を探したのですが、なかなか条件にあった物件が見つからず。たまたま通りかかったこの場所のシャッターに『テナント募集』という紙が貼られていて、ビビビっときましたね」

その日は徹夜で江戸川橋の歴史をはじめ、人口や乗降者数の伸び率などを徹底的に調べ上げた石井さん。「この場所は必ず伸びる」と判断し、翌朝すぐに内見を手配した。店作りについて相談していた店舗デザイナーと共に内見を行い、内装のイメージを固め、物件の申し込みをした時点では4番手だったというが……。

古民家をモチーフとした温かみのある15坪の空間。天井が高く空中階ロフト席も設けている

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「物件取得については、楽コーポレーション卒業生の先輩方に成功例を聞いて回り、事前に提出用の資料を作っていました。やはり条件の良い物件は、実績のある大手企業に抑えられてしまいますから。何の後ろ盾もない個人が大家さんに選んでもらうためにはプレゼンテーションは欠かせません。通常、炭火を扱う業態は大家さんに嫌がられることが多いので『炉端焼きの場合は煙が少ない』ことなどもしっかりと説明しました」

事前に用意していたというプレゼンテーション資料

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目指したのは、大家さんも常連として通いたくなるような魅力的な居酒屋。熱意のある手紙を送ったことなども功を奏し、人気物件の取得に成功する。

しかしながら創業の2019年3月は、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発出されるちょうど1年前。オープン初月に売上600万円を達成し、その後1年間の経営は順調に推移したが、コロナ禍では休業を余儀なくされたという。

「休業中も毎日お店に通っていました。掃除なんかをしていると『がんばってね』なんて声をかけてくださる方も多くて。地元の皆さまと絆が深まりましたね。しばらくして営業を再開したら、わーっとお客さまが集まってくれて。やっぱり居酒屋って大人たちが集まる社交場なんですよ。久しぶりの会話で盛り上がって、常連のお客さま同士の仲もより深まったように感じています」

コロナ禍により経営面での危機もあったが、結果だけを見れば、創業のタイミングも場所選びも申し分なかった。行動制限の緩和とともに売上も回復し、2023年の4周年記念月には再び月商600万円を達成。地域との結びつきが緩やかな繁華街での出店であれば、こうは順調にいかなかったかもしれない。

創業時、内装などの初期費用に2,300万円ほどかかったというが、物価高騰中の現在であれば3,000万円は超えたという予想もある。「すべて楽コーポレーションで学んだことのおかげ」と石井さんはしみじみと振り返っていた。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。