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2023年は飲食店の「倒産件数」が過去最多ペース。コロナ5類移行後も倒産増える理由

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新型コロナウイルス感染症の5類移行後、飲食店にも人出が戻ったように思われるが、2023年は飲食店倒産件数が過去最多を記録しそうな状況だ。今回は、飲食店の倒産件数が増加している理由について解説する。

飲食店の倒産件数が増加した2023年

2023年に入って、飲食店の倒産件数が増加している。2023年5月には新型コロナの感染法上の扱いが5類に移行し、5月の2019年同月比でも外食売上高は増加している。にもかかわらず、東京商工リサーチによる2023年1〜8月の「飲食業の倒産動向」によると、2023年8月時点ですでに2022年の倒産件数を上回っている状況だ。

なお、2023年1〜8月の飲食店業種分類別で倒産件数を見てみると、「食堂、レストラン」の140件が最多。昨年は70件だったのに対して、倍の倒産件数となっている。続いて「専門料理店」の130件、「酒場、ビヤホール」の118件と続いている。

過去数年の倒産件数の推移

新型コロナの拡大が始まった2020年からの倒産件数を見てみると、2020年は6月の98件をピークに多くの飲食店が倒産した。2021年からは、新型コロナウイルス感染症関連の手厚い支援策が功を奏したこともあり、減少傾向にあったものの、2022年後半からはまた増加傾向に転じている。5類移行に伴い、アフターコロナに向けた支援策が次々と終了したことも要因だろう。

飲食店の倒産件数は、2022年11月から10か月連続で前年同月を上回り、増加率は1月から8か月連続で50.0%を超えている状況だ。

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飲食店の倒産が過去最多を記録しそうな理由

飲食店倒産件数の急激な増加には、どのような理由があるのだろうか。

ひとつは、新型コロナ関連の支援策が打ち切られたことが挙げられる。中小企業・個人事業主に最大200万円が給付された持続化給付金や、地代・家賃(賃料)の負担を軽減するために最大600万円が給付された家賃支援金、事業縮小に伴う従業員への休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の特例措置など、さまざまな支援策が打ち切られた。

また、新型コロナの影響によって売上が下がった企業への融資である、ゼロゼロ融資(無利子・無担保の融資)の返済開始が2023年7月からピークを迎えていることも原因として考えられる。ゼロゼロ融資は2020年3月に始まり、無利子期間は最長で3年間となっているため、その返済に苦労している飲食店もあるはずだ。

さらに、あらゆるコストが高くなっていることも倒産件数増加に拍車をかけている。特に、ウクライナ危機によるエネルギー価格の上昇は、物流や食材への価格転嫁が行われるなど、大きな影響を与えた。円安によって、小麦製品や飼料など輸入に頼っているものの価格も高騰している。

加えて、人件費の上昇も収益を圧迫しているといえるだろう。飲食店としては、コスト高に対して値上げなどで対応するしかなく、厳しい状況が続いている。

なお、コロナ禍では「宅配飲食サービス業」が伸長したが、2023年の倒産件数が14件から41件と増加している。これは、新規参入が増えすぎたという理由もあるが、5類移行によって飲食店を利用する人が戻ってきたことも考えられるだろう。

「宅配飲食サービス業」と2023年1〜8月の倒産件数で最多の「食堂、レストラン」のほか、「持ち帰り飲食サービス業」、「専門料理店」、「喫茶店」については、すでに昨年の倒産件数を上回っている状況だ。

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生き残るためには現状だけでなく先々を見越した対策を

あらゆるコストの高騰などによって、飲食店にとっては厳しい状況が続いている。この夏の猛暑によって、野菜価格が高騰したことも打撃となっている飲食店もあるだろう。また、新型コロナ関連支援策の打ち切りや、ゼロゼロ融資の返済開始のピーク到達などによって倒産が増えているのは、いまだにコロナ禍の影響が残っているからこそだとも言える。

このような状況で生き残っていくためには、現状を打開する方法はもちろんのこと、先々まで見越した対策や工夫を考えていく必要があるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com