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2023年の外食売上、2019年を上回る。客数は回復せず原材料高騰など課題も

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画像素材:PIXTA

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日本フードサービス協会は1月25日、「外食産業市場動向調査 令和5年(2023年)年間結果報告」を発表した。2023年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、外食産業は回復してきたものの、原材料高騰や人手不足によって、経営環境は厳しい状態であることが明らかになった。今回は、年間結果報告から読み取れる2023年の外食産業の状況について紹介する。

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2023年の外食産業全体売上はコロナ禍前の2019年を上回った

2023年の外食産業全体売上は、前年比で114.1%、コロナ禍前の2019年比で107.7%となった。2020年から始まったコロナ禍は、2023年1月に第8波があったものの、3月13日からマスク着用は個人の判断が基本となり、4月28日には水際措置が終了、5月8日には新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、ポストコロナの社会環境へと変わっていった。それにともない、人流が回復し、インバウンド需要も拡大したことで、外食産業の売上も回復傾向になっていったといえる。2023年は全体売上だけでなく、すべての業態、すべての四半期で前年を上回った。

客数は2019年以下の一方、客単価が上昇

5類移行などで人流が回復したことにより、客数はすべての業態、すべての四半期で前年を上回った。全体では前年比106.3%となっており、特に「パブ/居酒屋」は前年比124.0%と回復している。

一方で、2019年比では90.9%となっており、2019年の水準まで回復してはいない。売上が2019年比で107.7%となったのは客単価の上昇が大きかったことが要因だろう。

引用元:日本フードサービス協会

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店舗数も回復せず、居酒屋は依然として厳しい状況に

客数と同様に、店舗数も2019年の水準まで回復していない。前年比で98.9%、2019年比で92.4%となっており、特に「パブ/居酒屋」は前年比91.2%、2019年比69.0%で減少幅が大きい。5類移行によって宴会需要は回復していると見られるが、「パブ/居酒屋」の中でも「居酒屋」が2019年比66.4%で、特に厳しい状況が続いているといえるだろう。

店舗数が2019年を上回っているのは、「ファミリーレストラン(中華)」の106.0%、「ファミリーレストラン(焼き肉)」の100.6%、「その他」の104.8%のみとなった。

客単価アップはコスト増による価格改定

客単価は前年比107.3%となり、外食産業全体売上の前年比114.1%に貢献したといえるが、手放しで喜べる状況とはいえないだろう。2022年から続いている円安やそれによる原材料の高騰、人手不足の常態化による人件費高騰など、さまざまなコストの値上げによる価格改定が客単価アップにつながっていると考えられる。

新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、外食産業は全体的に回復傾向にあるといえるが、「パブ/居酒屋」をはじめ厳しい状況はまだ続いている。原材料高騰、人手不足は継続している課題であり、2024年にどう改善していけるかが回復のカギになるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com