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飲食店で働くプロ必読の「本」10選。技術、センス、哲学を磨ける珠玉のセレクト

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料理本にも賞が与えられる時代に

「本屋大賞」や「マンガ大賞」、「翻訳大賞」など、出版業界には“〇〇大賞”とつく賞がさまざまとあるが、その中に「料理レシピ本大賞」という賞があることをご存知だろうか。料理本はジャンルとして確立はしているが、「賞」まで設けられていたとは驚きだ。

実際、書店に行くと料理本のコーナーはかなりの賑わいを見せている。ポップな彩りの表紙やセンスの良い盛り付けなどは見ているだけで飽きないものだ。しかし、プロが手に取る料理本はレシピ本だけには留まらないだろう。調理器具、インテリア、テーブルフラワー、食器など、家庭のそれとは一線を画すセンスやアイデア、知識を身につけられる一冊に出合いたいものだ。

そこでここでは、プロにこそ読んでほしい10冊の本を紹介する。すぐに役立つヒントやアイデアが満載なので、飲食店で働く方はぜひチェックしてみてほしい。

盛り付けのヒントが盛りだくさんの3冊

■『トーキョーバル:進化するバル・バールのメニューとデザイン』(柴田書店)
食の専門出版社である柴田書店が、スペインバルブームから進化を遂げた日本のバル・バール文化を“トーキョーバル”と名付け、20店200品の写真やレシピを紹介。レシピのアイデアや、盛り付けのセンスを学ぶことができる一冊。

■『Seasons : The Best of Donna Hay Magazine』Donna Hay著(Hardie Grant Books)
オーストラリアのフードスタイリストDonna Hayによる料理写真をまとめた一冊。洋書だが語学に堪能でなくても、ビジュアルだけでも十分に楽しめる。食材の選び方や盛り付け、食器使いが特に秀逸。飾りすぎないセンスの良さにも脱帽だ。

■『Japanese Farm Food』Nancy Singleton Hachisu著(Andrew Mcmeel)
日本の食文化をアメリカ人の視点で捉えた一冊。日本人と結婚し、日本在住歴20年のNancy Singleton Hachisuさんが日本の伝統料理を写真とレシピで紹介している。素朴でシンプルな、馴染み深いレシピはどこか懐かしく、一方で合わせる器や盛り付けの斬新さに和食の新たな可能性を感じられる。

道具や調味料の知識を深められる3冊

■『釜浅商店の「料理道具」案内』熊澤大介著(PHP研究所)
東京、合羽橋の専門店が教える、料理道具の「選び方」と「つき合い方」。プロの料理人の愛用道具などの話も収録。本書をヒントに、厨房の料理道具もブラッシュアップしてみてはいかがだろうか。

■『別冊Discover Japan ベスト オブ ニッポンの調味料』(エイ出版社)
日本の調味料の基本と言えば“さしすせそ”。しかしそれ以外にも、各地の風土とともに育まれてきた調味料が日本には数多くある。この本では土地土地で長年愛されてきた名作調味料の紹介とともに、一流料理人たちが愛用している調味料も紹介。調味料にまつわる疑問にも詳しく答えているなど、料理人必見の内容だ。

■『Cooking for Geeks –料理の科学と実践レシピ』Jeff Potter著(オライリージャパン)
料理を科学的に考察し、その仕組みを詳細に解説した一冊。様々な料理の“なぜ”を科学的に解析し、教えてくれる。これまで実践と経験からしか成功にたどり着けなかったテクニックへの新たなアプローチになるかもしれない一冊。

一流の真髄に触れる2冊

■『「オーボンヴュータン」河田勝彦のフランス郷土菓子』河田勝彦著(誠文堂新光社)
フランス菓子の名店『オーボンヴュータン』のパティシエ河田勝彦氏の集大成となる一冊。本書では、河田氏がフランス修行時代に出会った郷土菓子138品のレシピと作り方を掲載。自身のフランスでの経験等を語ったコラムも掲載。パティシエ必読の一冊。

■『進化するレストランNOMA(ノーマ)-日記、レシピ、スナップ写真』ファイドン
英国のレストラン誌が選ぶ「世界ベストレストラン50」で、これまでに4回1位を獲得したデンマークのレストラン『ノーマ』。その創業者にしてカリスマシェフ、レネ・レゼピのレシピとスナップ、日記がセットになった料理本だ。レシピやスナップはほかの料理本にもあるが、ここでは日記に注目したいところ。カリスマシェフの創造のヒントがこの日記に隠されているかもしれない。

想像力を刺激する2冊

■『花森安治のデザイン』(暮らしの手帖社)
朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でもおなじみの、雑誌『暮らしの手帖』。本書は花森安治が編集長をつとめた、創刊から30年の間の表紙原画103枚を収録するほか、写真表紙のフィルム、レイアウト指定紙、カット、手書き文字などをまとめたアートブックだ。料理と直接の関係はないが、ハイセンスな表紙デザインの多くに野菜などの食材が使用されている。そのアーティスティックな色彩感覚や配置の妙など、インスピレーションを刺激する一冊。

■『美味礼賛 上・下巻』ブリア=サヴァラン著(岩波文庫)
食通として世に知られたフランスの法律家ブリア=サヴァランが、人が物を“食べる”ということについて様々な角度から考察した哲学的な一冊。本書が書かれたのは1825年、現代とはまったく違う“食べる”習慣の中で考察された食への価値観は、現代人が読んでも新鮮な驚きと感動を味わうことができる。決して容易ではない内容ではあるが、飲食に関わる多くの人に読んでほしい一冊。

ジャンルの壁を超えて、多くの書籍にアイデアやヒントが溢れていることがお分かりいただけただろうか。洋書や写真集など、高額なものもあるが、装丁の美しい書籍はそのまま店内のインテリアに使えることもできるので、お気に入りの一冊を見つけて今後の店作りに生かしてみてはいかがだろうか。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。