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飲食店なら知っておきたい「ハラル(ハラール)認証」。提供時に注意すべきこととは?

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2022年10月11日に外国人の新規入国制限の見直しが行われ、外国人観光客を目にすることが増えてきたいま、多様な食文化のひとつとして「ハラル(ハラール)」が注目されてきている。今回は、インバウンド需要を見込む飲食店経営者が知っておきたい「ハラル」の概念と、ハラル認証制度についてご紹介する。

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ハラル(ハラール)とは?

「ハラル(ハラール)」とは、イスラム教において「許されたもの」「合法」を意味する言葉だ。イスラム教ではさまざまなものや行動に対して、許されたものとそうでないものが定められている。アッラーの教えを守らなければならないイスラム教徒(ムスリム)は、ハラルかどうかを判断して生活しており、例えば食べ物においては、神に許された食べ物(ハラルフード)以外は食べてはならないとされている。

ハラルフードとしては、米や小麦などの穀物、野菜、果物のほか、魚介類、牛乳、卵などが挙げられる。牛肉や鶏肉は食べてもいいが、イスラム法に則った食肉処理が施されていなければならない。

一方、イスラム教で許されていない食べ物を「ハラム」と呼び、代表的なものに豚肉やアルコールがある。豚肉は特に厳しく規制されており、豚肉そのものだけでなく、豚が含まれる餌を食べた家畜や豚に触れたもの、豚肉と冷蔵庫で一緒に保存されていたものもハラムとされる。

また、ハラルかハラムか判断できないものを「シュブハ」といい、ムスリムはシュブハも避けることが多いといわれている。

現在も増え続けているイスラム教徒「ムスリム」

現在、世界の人口の4人に1人はムスリムであるといわれており、そのうちの6割以上がアジアにいる。また、ムスリム人口は増え続けており、2100年にはキリスト教徒を抜いて最大の宗教人口になるとされる。

日本では、ムスリムの多い東南アジア各国からの観光客が増えてきており、ムスリムへの対応が求められる機会も増えてくるだろう。しかし、ハラルフードしか食べられないムスリムにとって、現在の日本での食の選択肢はかなり少ないといえる。

今後、インバウンド需要を見込む飲食店経営者は、ムスリムと「ハラル」のおおよその概念を理解することも求められるだろう。

認証機関による「ハラル認証」(ハラルマーク)とは?

提供された食べ物を、ハラルかどうかを見た目では判断することはできない。そのため、認証機関が保証するハラル認証制度がある。

日本の代表的なハラル認証機関としては、一般社団法人ハラル・ジャパン協会、宗教法人日本ムスリム協会、イスラミックセンター・ジャパン、NPO法人日本ハラール協会などがある。ただし、ハラル認証機関は日本でも30以上あり、その判断基準や認証取得費用も認証機関によって異なるのが現状だ。

条件を満たし、ハラル認証機関に認証されたレストランには、「ハラルマーク」を掲示することができる。ハラル認証には、食品に関するものと飲食店に関するものの2つの種類がある。

■食品のハラル認証制度
食品の製造過程において使用される原材料、製造方法、添加物などが、イスラム教の戒律に適合していることが求められる。イスラム教では、豚肉やアルコールなどは禁忌とされているため、これらの成分が含まれていないことが必要だ。また、肉類に関しては、特定の方法で屠殺されることも条件である。

■飲食店のハラル認証制度
飲食店でハラル認証を得るには、店舗内で使用される食材や調理器具、清掃用具などがハラルであることが求められる。また、アルコール飲料の提供がないことも条件。店舗の内装やデザインにも一定の規定がある。ただし、飲食店に関するハラル認証には段階が設けられている。NPO法人「日本ハラール協会」が行っている飲食店へのハラル認証は以下の3段階である。

・ハラールレストラン認証…食事は完全にハラルで、アルコール飲料の販売がない店舗向けの認証
・ムスリムフレンドリーレストラン認証…食事は完全にハラルで、アルコール飲料販売がある店舗向けの認証。上記ハラールレストラン認証との違いはアルコール飲料販売がある点
・キッチン認証…ハラル専用のキッチンに対する認証で、主に業種としては仕出し弁当や機内食などが該当する。冷凍弁当やレトルトパウチなどはこれには該当しない

ハラルマークの例(イメージ) 画像素材:PIXTA

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ハラル(ハラール)として料理を提供する際に注意すべきこと

飲食店がハラルフードを取り扱う場合、単純にハラル認証を受けた食材を使えばいいというものでもない。ハラル認証を受けた食材を使うことはもちろんだが、器具や調理方法にも気をつける必要がある。

例えば、ハラル認証を受けた食材であっても、酒やみりん、ラードなどを使って調理した時点で、ハラルフードとはいえなくなってしまう。前述のように、ハラル認証を受けた食材を豚肉と一緒に冷蔵庫で保管することや、豚肉を切った包丁で調理することなども避けなければならない。

また、店内でアルコールを提供している場合も注意が必要だ。近くに飲酒している人がいるだけで不快に感じる人もいるため、店内でアルコールを提供しており、飲酒をするお客もいるということを、ムスリムのお客に対して事前に説明しておきたい。

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このように、ハラルフードを取り扱うためにはハラル認証を受けた食材を使うだけでなく、さまざまな点に注意しなければならない。そのため、難しいと思われがちだが、最初からすべてを完璧に行う必要はない。

ハラルフードについてどれだけ対応しているかを正確に伝え、判断はムスリムのお客に委ねることが大切だ。難しく考えず、今後増加すると考えられるムスリムのお客に対応するため、できることから取り入れてみてはいかがだろうか。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com