ドラマ『まれ』がついに最終回。じつは多い、ふるさと出店の魅力って？
Photo by Susanne Nilsson「Pastry」
『まれ』、最終回目前。これまでの歩みを振り返る
NHK連続テレビ小説『まれ』が、9月26日に最終回を迎える。そこで今回は、半年に渡って放送されてきた『まれ』について振り返りつつ、主人公・希（まれ）が示した料理人としての在り方を探りたい。まずは、『まれ』をご覧になっていない方に向けて、ストーリーを簡単にご説明していく。
土屋太鳳演じる希が幼少期を過ごしたのは石川県能登地方。夢を追うことが苦手な希は、「地道にコツコツ」を座右の銘に、生真面目な性格の女の子へと成長する。しかし、能登で出会った人々に影響を受け、「世界一のパティシエになる」という夢を持つように。そして横浜へ旅立ち、フランス帰りの名パティシエのもとで修業を開始する。
横浜修業時代には、希が「理想の味」を求めてケーキ店を食べ歩く姿が描かれている。登場するケーキ店は横浜に実在する店舗で、視聴者も「撮影で使われたケーキ店はどこ？」と気になっているようだ。そこでここでは、撮影で登場したケーキ店をいくつかご紹介していこう。
『パティスリー ラプラス』
希が横浜へ行き、最初に訪れたケーキ店。作中に登場した「フランボワーズ」というケーキは、ラズベリームースと2種のチョコクリームが層になっており、さわやかな味わいが魅力の一品。そのほか、ケーキ・焼き菓子ともに種類が豊富で、価格も手頃。また、店内は厨房が見えるカフェ形式となっており、パティシエがケーキを作る姿を目の前で楽しむことができる。
『カフェ・ザ・ローズ』
港の見える丘公園の展望台にほど近い一軒家カフェ。作中では名物である「ベリーロールケーキ」が登場。ケーキは日替わりで提供されるようで、訪れるたびに新しい味を楽しむことができる。春と秋には、目の前のローズガーデンにバラが咲き誇るので、テラス席でバラを眺めながらのんびりとケーキを味わう…なんて使い方ができる店舗だ。
『横濱元町洋菓子研究所』
チーズがメインの洋菓子店。作中で登場したカップケーキは「シシリアン」と呼ばれるもので、季節限定商品となっている。看板商品は「タルトフロマージュ」。フランス産のクリームチーズを使用し、チーズ本来のおいしさを引き立たせたスイーツだ。
横浜を離れ地元へ戻る希。世界一のパティシエになる夢は果たして…
希は横浜で修業を重ね、順調にスーシェフまで昇格。そして同時期に結婚もしている。その後、様々な問題に直面し、結局は横浜を離れて能登へ帰郷する。帰郷後は、紆余曲折がありながらも自身の店舗『プチ・ソルシエール』を開店。「世界一のパティシエになる」という夢を叶えるべく奮闘している。
希のように都会で修業し、その後、地元で店を持つというキャリアの積み方は珍しいものではないだろう。やはり東京をはじめとした都会の方が、有名店も多く高い技術を学べる可能性が高い。「地元で店を開きたいけど、修業だけは東京で！」なんて考えを持っている料理人も多いのではないだろうか。そこでここからは、東京で学び、地元で店を持った料理人、『Y ASAI（イグレック アサイ）』の浅井康史シェフについてご紹介していきたい。
東京で培った本物の技術を、地元で生かしたい
浅井氏は『ジュエルロブション』、『レストランひらまつ』といった一流店で腕を磨いてきた人物。現在『ロブション』でエグゼクティブシェフを務める渡辺雄一郎氏、そして六本木の名店『リューズ』の飯塚隆太氏を同期に持ち、実力派がしのぎを削る厳しい環境で修業を重ねてきた。当然、同期の彼らと同じく東京で輝き続けるという選択肢もあったはず。それなのになぜ、名古屋の地を選んだのだろうか。浅井氏はWEBメディアのインタビューでこのようなコメントを残している。
「自身が育った名古屋で、東京やフランスと時差のない正統派のフランス料理レストランを作りたかった」
確かに、世界一の美食の街と称される東京と名古屋では、同じフランス料理でも差が出てしまうこともあるだろう。浅井氏は、一流店で学んできた自身の腕で、その差を埋めようとしているのだ。
2004年のオープン以来、名古屋のフレンチシーンでひと際強い存在感を放ち続ける『Y ASAI』。芸術性にあふれたその一皿は、地元の方々はもとより、全国の美食家たちを虜にし続けている。浅井氏の夢は見事に花開いたというわけだ。
「世界一のパティシエになる」という夢を抱く希が、地元・能登でどのような花を咲かせるのか。最終回に向けての展開に目が離せなくなりそうだ。
