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飲食店を取り巻く「フードロス(食品ロス)」問題。利益改善にもつながる対策とは?

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近年、SDGsに対する関心が高まったことで、「フードロス」や「食品ロス」という言葉を耳にする機会が増えてきた。フードロス(食品ロス)は、外食産業でも起こっており、飲食店にとって無視できない社会問題となっている。そこで今回は、改めて飲食店におけるフードロス(※1)の問題について解説をしていく。

※1…本記事では「フードロス」と「食品ロス」を同義として扱います

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フードロス問題(食品ロス)とは? 定義や現状を解説

フードロスとは、「まだ食べられるのに、捨てられている食品」のこと。世界規模の問題となっており、SDGs(持続可能な開発目標)でも食料廃棄の削減がターゲットの一つとなっている。

日本でも家庭や事業から発生するフードロスが社会問題化している。農林水産省が実施した調査によると、日本の2021年度のフードロス量は523万トン。この数値は、全国民が1日1杯(114g)のご飯を捨てているのとほぼ同じ量だという。

日本のフードロス量は、徐々に減少しており、2020年度は調査が始まった2012年度以降最少の値となった。しかし、2020年は新型コロナウイルスが流行した年であり、2021年は6年ぶりの増加に転じている。アフターコロナ時代となった今、さらに増加することも充分に考えられるだろう。

飲食店がフードロス問題に取り組むべき理由

フードロスは、家庭と事業の両方で発生している。前述した農林水産省の調査によると、2021年度の家庭によるフードロスは244万トン、事業によるフードロスは279万トンと、やや事業から発生するフードロスの方が多い。

飲食店の食料廃棄は事業系のフードロスに含まれ、2021年度には、全体の15%に当たる80万トンものフードロスが発生している。ここ数年、フードロス量が減少していたとは言え、決して無視できない数字と言えるだろう。

では、飲食店では何が原因で年間80万トンものフードロスが発生しているのだろうか。弊社のリサーチサービスである「飲食店リサーチ」が2022年8月に実施した調査によると、約2割の飲食店がフードロスの一番の原因として「お客様の食べ残し」(※2)と答えている。

このほか、使いきれないほどの食材の「仕入れ過ぎ」や料理の「仕込み過ぎ」、ドタキャンやノーショーといった「無断キャンセル」も食品の廃棄につながる。このように、一言で飲食店のフードロスと言ってもその原因は多岐に渡る。

※2…上記アンケートにおいて、フードロスを感じているという主旨の回答では「野菜くず」がトップですが、「フードロス」の「まだ食べられるのに、捨てられている食品」という定義に基づき原稿を構成しています

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飲食店がフードロス対策を行うメリットとは?

飲食店がフードロス対策に取り組むことは、資源や環境への配慮だけでなく、店舗の「利益」を改善することにもつながる。

たとえば、仕入れ過ぎや仕込み過ぎによるフードロスでは、売上につながらないため、必然的に原価率が上がってしまう。仕入れや仕込みの量を適切にすることで、無駄な食材費を抑えることができる。

また、飲食店では廃棄をするのにお金がかかるため、フードロスが発生するとその分支出も増える。フードロスを削減すれば、無駄なコストも減らせるのだ。

飲食店ができるフードロス削減への取り組み

では、飲食店では、フードロス削減のために、何を行えばいいのだろうか。ここからは、飲食店ができるフードロス対策を紹介するので、参考にしてほしい。

■食材を残さない仕入れ・仕込み
仕入れや仕込みの際、勘を頼りに量を決めている店舗もいるかもしれないが、より正確に予測するためにも、過去の売上情報や天気などのデータを活用し、関連性などを調べてみると良いだろう。また、冷凍や真空パックによる密封など、食材を長期間保存できる方法を取り入れるのもフードロス対策になる。

■料理の量・サイズの選択肢を増やす
お客が全ての料理を食べきれるよう、食事の量やサイズの選択肢を増やすのも一つの手だ。お客が食べきれる分だけ注文してもらうことで、食べ残しを減らすことにつながる。小盛りを希望するお客には割り引きを適用するなど、何らかのインセンティブを設けるのも良いだろう。

■注文量に対する声掛け
メニューの形式によっては、お客が正確に料理のサイズをイメージしにくいこともある。お客の注文量が多いと感じた場合は、声掛けをすると良いだろう。また、メニューに写真を挿入するなど、視覚的に分かりやすい工夫を取り入れるのもおすすめだ。

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■提供タイミングの意識
料理を提供する際は、タイミングを意識することが大切だ。一度に複数の料理を出してしまうと、料理によっては食べきる前に味が落ちてしまうこともある。お客が最後まで美味しく食べられることを意識し、適切なタイミングで料理を提供すると良いだろう。

■持ち帰りの実施
海外では、「ドギーバッグ」により、食べ残しを持ち帰る文化がある。ドギーバッグは、フードロス削減に有効な取り組みの一つではあるが、食中毒のリスクもある。お客から持ち帰りの希望があった場合は、衛生面の注意事項を説明するなどし、お客の自己責任ということで実施するのが良いだろう。

フードロス問題は、飲食物を提供している全ての飲食店に関わりがある。今回ご紹介した対策は、すぐに始められるものが多い。まずは、自分たちができることから取り組んでみてはどうだろうか。

参考:農林水産省「食品ロスとは」「最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに」
消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。