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居酒屋の「倒産」件数が過去最多ペース。売上高も2019年比で66.3%にとどまる

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新型コロナが感染症法の2類から5類へ移行し、飲食業界も賑わいを取り戻したように見える。一方で、資金繰りの悪化や物価高などの影響で、居酒屋の倒産件数が増加しているという調査結果も出ている。今回は日本フードサービス協会、帝国データバンクの調査結果をもとに、飲食業界の現在を紹介する。

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5月の外食売上高、コロナ禍前の水準を上回る

日本フードサービス協会が発表した「外食産業市場動向調査 2023年5月度 結果報告」によると、新型コロナが感染症法の2類から5類へと移行した2023年5月の外食売上高は、前年同月比で111.8%と増加した。2019年比でも7.6%増加しており、コロナ禍前の水準を上回った。コロナが5類に移り、行動制限がなくなったのが5月8日。GW後半から店内飲食の好調が続いたことに加え、帰省客・国内観光客・インバウンドの消費が盛り上がったことが売上高を押し上げたとみられる。

業態別で最も売上を伸ばしたのは「パブ・居酒屋業態」で、前年比122.5%。行動制限がなくなり、大人数を含めて宴会需要が戻ってきたことが回復傾向につながった。一方、2019年比では66.3%にとどまった。ビジネス街・繁華街を中心に店舗整理が進み、コロナ禍前に比べ店舗数が68.5%にまで減少したことが売上に表れたといえる。その他業態では、喫茶(前年比118.8%)、ディナーレストラン(前年比114.6%)、ファミリーレストラン(前年比112.0%)が好評だ。

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零細規模の居酒屋を中心に倒産が増加

活気が戻っているようにみえる居酒屋業態だが、帝国データバンクが6月7日に発表した「『居酒屋』倒産動向:全国企業倒産集計2023年5月」によると、焼鳥店などを含む「居酒屋」の倒産件数は急増している。今年1〜5月だけで88件発生。前年から40%増で推移しており、コロナ禍の2020年の同時期と比べても多い数字だ。このペースで倒産が続けば、コロナ禍直後の2020年の累計189件を上回り、過去最多を更新する可能性がでてきた。

株式会社帝国データバンク 6月7日プレスリリースより

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特記すべきは、個人事業で資本金が100万円に満たない零細居酒屋の倒産が今年の倒産件数の45.5%数を占めていることだ。コロナ禍でも2021年35.8%、2022年29.5%と倒産件数割合は高くなかったが、今年になり悪化。時短協力金や雇用調整助成金など公的支援の縮小・打ち切りにより資金繰りが悪化したことに加えて、「家飲み」の定着、食材・エネルギー・物流・人件費等の上昇が重なり、廃業を決めるケースが増えているとみられる。

株式会社帝国データバンク 6月7日プレスリリースより

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コロナ禍に比べ、売上は回復傾向にあるものの、運営コストの増加により利益が出づらくなっていることは、どの業態でも否めない。依然、厳しい状況が続いていることに間違いはなさそうだ。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」