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ワタミ5年ぶり黒字転換、ホリエモンの予言が見事に的中? 気になる外食企業の決算状況

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居酒屋の『和民』などを展開する株式会社ワタミ(本社:東京都大田区、代表取締役社長:清水邦晃)が、5年ぶりの黒字転換を果たした。2017年4~12月期連結決算で、純利益が3億1700万円となったことを発表。前年同期6億7600万円の赤字からの反転。厳しい労働環境や労務問題の多発で“ブラック企業”のイメージが強くなり客離れが加速していたが、業態転換に成功して上げ潮に。ここではワタミの最近の動きを追うとともに、気になる外食産業の決算を紹介する。

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『三代目鳥メロ』、『ミライザカ』への転換が大成功

ワタミは2014年3月期に1631億円の売上があったが、2017年3月期には1003億円と、3年で売上が38.5%減という落ち込みを経験した。企業イメージの問題が強かったと同時に、過剰な安売り競争も業績下降に拍車をかけた。2018年3月期は1000億円を切る見通しだが、それでも最終利益は前期の18億円の赤字から1億円の黒字を見込んでいる。

劇的な黒字の原因は業態転換。ワタミといえば、『和民』、『坐・和民』、『わたみん家』などが思い浮かぶが、近年、鶏料理主体の『三代目鳥メロ』や、唐揚げ主体の『ミライザカ』などに次々と転換、これらが業績を牽引した。展開店舗数は『三代目鳥メロ』が115店舗、『ミライザカ』が100店舗と、“新勢力”の合計は215店舗。一方、『和民』『坐和民』が141店舗、『わたみん家』は29店舗と“旧勢力”は170店舗となり、完全に新旧勢力が逆転している(2018年1月現在、同社発表)。一部では「ワタミ隠しが成功」という趣旨の報道もなされているが、確かに『鳥メロ』、『ミライザカ』をワタミグループと知らずに利用している客は多いかもしれない。

ホリエモンの言葉「だって飽きたでしょ」「新しい道を模索して」

じつはワタミの業績悪化が問題になり始めた2014年当時、実業家の堀江貴文氏は、ワタミについてテレビに出演した際に以下のような趣旨の発言をしている。「ワタミの業態が古くなったということです。だって飽きたでしょ」。さらに安売り戦略はいつか破綻することに言及し、再生に関して「どんどん新しい道を模索して、高級志向にするとか、貪欲にやっていく会社は強い。業界改革性とスピードです」と話した(TOKYO MX「5時に夢中!」2014年9月26日放送、出典:ライブドアニュースートピックニュース)。

『和民』や『坐・和民』が飽きられたことによると思われる業績の悪化、スピード感を持って新業態への転換を進めて黒字転換をしたことなど、堀江氏の言葉通りの展開になっている。

松井秀喜氏呼ぶパフォーマンス、『いきなり!ステーキ』驚異の決算

『いきなり!ステーキ』が絶好調の株式会社ペッパーフードサービス(本社:東京都墨田区、代表取締役:一瀬邦夫)は2月14日に決算を発表。それによると、2017年12月期の連結経常利益が23億2200万円となり、2016年12月期の9億7300万円から2.39倍と倍増したことを明らかにした。2018年12月期は40億3000万円となる見通しで、5期連続で過去最高益を更新することになりそうだという。

2017年2月に米国進出し、今年2月16日にはニューヨークに米国での4号店をオープン。開店式典には元ヤンキースの松井秀喜さんも駆けつけるという派手なパフォーマンスを演じている。そのパフォーマンスに負けない派手な決算であった。

『ロイヤルホスト』を運営するロイヤルホールディングス株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼CEO:菊池唯夫、代表取締役社長兼COO:黒須康宏)の2017年12月期の連結経常利益は60億5600万円と、対前期比で16.3%とアップした。売上高も1355億6300万円の1.9%増と堅実な伸びを記録。2017年1月から24時間営業をやめていることから、その影響が注目されていたがプラス方向に働いているようである。深夜営業を廃止したことで、店員を忙しいランチタイムに増強できたことによる効果があったと分析する向きもある。

24時間営業は顧客にすれば便利ではあるが、店を開けておくコストも日中以上にかかり、しかも従業員の負担も大きくなる。そこでランチやディナータイムに人も物も集中させて経営効率を上げるというのが基本的な考えであるのだが、ここまでのところ、試みは成功していると言っていい。

吉野家もバラ色決算、ソフトバンクとのタイアップの恩恵大きく

牛丼の『吉野家』の株式会社吉野家ホールディングス(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河村泰貴)も急激な回復を見せている。今年1月に2017年3月~11月の連結経常利益が前年同期比65.6%増の29億9300万円に到達。今期の予想は営業利益で前年同期の2.4倍の44億円、最終利益は68.3%増の21億円になると見込まれている。

なお、『吉野家』では2018年2月の既存店の売上は36.3%、客数は54.0%アップを記録した。これはソフトバンクの「SUPER FRIDAY」とのタイアップによる影響が大きいとしている。ソフトバンクのスマートフォンを利用中の客に、毎週クーポンを配布するサービス。客はそのクーポンを『吉野家』の店舗で提示することで、2月は牛丼(並盛)を1杯サービスされるというものであった。こうしたサービスの性質もあってか客単価は11.5%減となっているが、それを押し上げる売上増となっている。

外食産業は生き残りが厳しい世界で、戦略次第で売上は激しく上下する。今期はワタミの業態改革、ロイヤルHDの営業形態の改革、吉野家の機を見るに敏な動きなど、大手の成功例が目についた決算であった。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/