私生活を優先、電話は苦手……。Z世代を雇用した飲食店の8割が世代間ギャップを実感
Z世代(1996年〜2012年に生まれ)といえば、デジタルネイティブの新世代というイメージが強い。2023年の今、上は27歳になり、すでに社会的地位を確立している人もいるだろう。特に慢性的な人材不足が課題の飲食業界においては、学生アルバイトを含めて、Z世代の活躍に期待が高まっている。そこで弊社が運営する「飲食店リサーチ」では、飲食店でのZ世代の活躍について調査すべく、「Z世代」の従業員との関わり方に関するアンケート調査を行った。本記事では、この結果を紹介する。
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■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:360名
調査期間:2023年4月27日~2023年5月9日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「Z世代」の従業員との関わり方についてのアンケート
7割以上の飲食店でZ世代が活躍。チャット連絡や柔軟なシフト調整に応じる店も
Z世代の従業員の在籍状況について尋ねると、過半数にのぼる53.3%が在籍中と回答。「現在は在籍していないが、過去に在籍していた(22.8%)」を合わせると、76.1%の店舗でZ世代が在籍した実績があり、多くの飲食店でZ世代が活躍していることがわかった。
画像を見るZ世代の在籍歴がある店舗にZ世代の従業員がいることをきっかけに、既存の慣習やシステムを変更したか尋ねると、「ある」と回答したのは24.1%。具体的な施策を尋ねると、「シフト申請や連絡事項を伝えるツールとしてLINEを導入した」という声が目立つ。また従業員がプライベートの時間を確保しやすいように「シフトの組み方に柔軟性を持たせた」との回答や、社員の枠組みに限定社員制度やボーナス制度を作るなど、「雇用形態や労働環境を見直した」といった回答もあった。
「プライベート優先」「電話が苦手」。Z世代に感じるギャップ
Z世代の従業員との間に世代間ギャップを感じたことがあるか尋ねると、最も多かったのが「ややある(45.3%)」。続く「とてもある(35.8%)」との回答を合わせると、81.1%もの人が世代間ギャップを感じていたことが明らかとなった。
画像を見る具体的にどのような点でギャップを感じたかを尋ねると、さまざまな体験談が寄せられた。まず目立ったのが、「仕事が残っていても、先に決めている終了時間を優先して帰ってしまう(東京都/フランス料理/1店舗)」「プライベートを最優先する子が多い。収入には、それほどこだわりがない(三重県/その他/1店舗)」のように、「プライベートを優先しがち」という回答だ。
このほか、「電話の受け答えが苦手」「缶切りや栓抜きなどが使えない」という回答も複数みられた。また、「退職の意思をメールで送ってくる(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)」「叱られ慣れていないせいか、それによる反省や意識の変化が少ないように感じる(東京都/専門料理/2店舗)」というように、コミュニケーションの取り方にズレを感じるという声もあった。
そんなZ世代とのコミュニケーションでは、どのような点に留意しているのだろうか。最も多かったのは、「フラットな立場でフレンドリーに接する」との回答で40.5%。「仕事へのモチベーションを下げないように配慮する」、「仕事へのモチベーションを上げるように働きかける」も、共に30%以上の人が気をつけているポイントとして挙げた。
画像を見る半数がZ世代に「任せたいタスクあり」。若い世代の知識や発想に期待
Z世代とのギャップに悩む飲食店は多いが、一方で新しい世代に期待する声もある。全ての飲食店を対象に、Z世代の従業員にこそ任せたいタスクがあるか尋ねたところ、およそ半数が「ある」(「任せたいタスクがあり、すでに任せている」、「任せたいタスクがあるが、まだ任せられていない」)と回答。具体的にどのようなタスクを任せたいのか尋ねたところ、最多は「SNS運用によるプロモーションや集客」だった。
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任せたいタスク別に、Z世代へ期待している理由を尋ねると、ほぼすべてのタスクにおいて「Z世代ならではの新鮮な発想、価値観を活かしてほしいから」との回答が目立った。ただし、「調理」、「予約受付・問い合わせ対応」、「人材採用・育成」に関しては、「今の文化や流行に関する知識を活かしてほしいから」との回答が比較的多い。これは飲食店経営者の多くが、若者の流行をメニューに取り入れたいと考えているほか、SNSを活用した予約導線や人材募集に、Z世代が得意とするデジタル知識を取り入れたい意向があるためだろう。
画像を見る人材不足が深刻化する飲食業界にとって、働き手としてのZ世代の存在は無視できない。彼らの考え方を理解し労働環境を変化させていくことや、得意な分野で能力が発揮できるよう配置転換するなど、柔軟な変革が必要になりそうだ。