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飲食店も他人ごとではない「マフィン食中毒」騒動。改めて衛生管理の大切さを考える

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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11月11日、12日に東京ビッグサイトで開催されたアートイベント「デザインフェスタ」で、出店した焼き菓子店のマフィンを食べた人が体調不良を訴えた。厚生労働省はリコール対象事案として本件を公表。2日間で販売された約3,000個が回収対象となっている。今回は、このリコール対象事案の経緯と、食の安全のために飲食店経営者が気をつけるべき点を解説する。

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マフィンを食べた人が腹痛、嘔吐、下痢の健康被害を訴える

11月11日、12日に東京ビッグサイトで行われたアートイベントにて、東京・目黒区にある焼き菓子店が出店。そこで販売されたマフィンを食べた人が、腹痛などの体調不良を訴えたり、異臭や具材が糸を引いている点を指摘したりする声が相次いだ。焼き菓子店はSNSで謝罪し、15日には保健所の立入検査があったことを報告している。

厚生労働省はリコール対象事案として公表、2日間で販売した「栗マフィン」など9種類約3,000個が回収対象に。マフィンを食べた人に腹痛、嘔吐、下痢の健康被害が出ているという。なお、健康への危険性の程度は3段階あるうち最も危険度が高い「CLASS I」に分類された。「喫食により重篤な健康被害または死亡の原因となり得る可能性が高い食品」とされており、腸管出血性大腸菌に汚染された生食用野菜や、ボツリヌス菌に汚染された容器包装詰食品、魚種不明フグなどの有毒魚と同等とされる。

このマフィンは、防腐剤などの添加物を使わず、砂糖は市販品の半分以下だったという。これを1人が5日間かけて作り、クーラーによって18度以下になった室内で保管していた。

画像素材:PIXTA

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客観的な指標による期限の設定が大切

今回の事案では、食品の衛生管理に問題があったと考えられるが、飲食店経営者はどのような点に気をつければよいのだろうか。

まず、衛生管理で重要なのがHACCPの考え方だ。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、基礎的な衛生管理を指す「一般的衛生管理」と、各メニューの調理過程ごとに作る「重要管理」のポイントにおいて発生しうる危険を分析し、衛生管理計画を立て、その計画を実施、記録していく作業のこと。食品関連事業者のHACCPによる衛生管理は、2021年6月から完全義務化されている。

その上で、販売する際には基準を満たした賞味期限・消費期限を設定する必要がある。賞味期限とは品質が変わらず美味しく食べられる期限で、消費期限は安全に食べられる期限のこと。厚生労働省と農林水産省は「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を定めており、これに基づいて設定することが大切だ。基本的な考え方は下記のとおり。

・食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)の設定
・食品の特性に応じた「安全係数」の設定
・特性が類似している食品に関する期限の設定

客観的な項目(指標)とは、理化学試験や微生物試験などで数値化できる項目(指標)のこと。つまり、見た目や味が問題なかったとしても、客観的な指標で判断する必要があるということだ。また、食品の特性に応じ、1未満の安全係数をかけて、客観的な項目(指標)で得られた期限よりも短い期間を設定することも基本だといえる。例えば、品質が急速に劣化しやすい食品であれば、それを考慮して劣化するより短い期限を設定すべきだとされる。

消費者に安全な食べ物を提供するためには、飲食店が衛生管理を徹底した上で、正しい賞味期限・消費期限を設定することが大切だ。飲食店の中にはデリバリーやテイクアウト、またはオンライン販売で商品を提供する店舗もあるだろう。食中毒などを起こさないよう、改めて衛生管理を徹底し、賞味期限・消費期限の設定を見直してほしい。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com