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グルメ業界から注目を集める福岡で探る、繁盛店の人気のワケ。答えは「スタッフへの思い」にあった

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『炉端 百式』の二号店、『めしやコヤマパーキング』は10月にオープン

飲食業界に活気があると、全国から注目を集める街「福岡」。近年、人気店が多店舗展開を進めていたり、東京、さらには海外へ出店したりと、明るいニュースを耳にする機会が増えている。繁盛店であり続ける秘訣はどこにあるのか、繁盛店の店主たちに話を聞いた。

スタッフが楽しそうな店には、自ずと客が集まってくる

最初に話を聞いたのは、現在、大名・今泉・渡辺通・博多の各エリアで6店舗を展開するCOMATSUグループの松村宗孝さん。「酒場の親父になりたかった」と独立を果たした松村さんは、もともと多店舗展開をする予定はなかったという。

「私たちはお客様商売ですから、お客様に楽しんでほしいと思っています。でも、それと同時にスタッフにも楽しんでほしいと思っているんです」。そう話す松村さんのもとには、同じ志を持つスタッフたちが自然に集まってきたという。そんないいスタッフに出会ってきたことが、2店舗目以降の出店に繋がった。飲食業界で人手不足が課題となっているが、松村さんのもとに集まるのは実力のあるスタッフばかり。「面接のときに『スタッフの皆さんが楽しそうに働いているところに惹かれた』と言われることが多いんですよ」と松村さんは笑顔を見せる。店主はもちろんスタッフが楽しそうな店は、おのずといい人材がそろい、客が集まるのだ。

ヨーロッパのカフェテリアを思わせる上質な空間が広がる『コマツ プルミエ』

従業員が幸せであるために、活躍の場を提供する

松村さん同様、スタッフの活躍の場を求めて2号店出店に踏み切ったのが、以前、本メディアでも紹介した『炉端 百式』の店主・上山修さんだ。坪月商43.3万円を誇る繁盛店を営む上山さんのもとには、実に多くの出店依頼があるという。

「正直、多店舗展開するつもりは全くありませんでした。ただ、お客様も従業員も増えてきたときに増床して50席の店になって……。50席あると、できることとできないことが見えてくるんですよね」と上山さん。「もっとこんなことがしたいのに」という欲求が出てきたことに加えて、料理に対して真摯に向き合いたいという従業員たちが輝ける場所を作りたいとという思いが募った。結果、これが決め手となり、2号店『めしやコヤマパーキング』をオープンさせるきっかけに。「この先は未定ですが、大きく展開するつもりはありません。僕についてきてくれる従業員たちが、もっと幸せになる方向を見つけていけたらいいですね」

本場の空気をスタッフに。メキシコへ逆輸入出店

最後に話を伺ったのは、メキシコ料理専門店『エルボラーチョ』の店主・杉山芳文さん。ここ数年、福岡の飲食店の海外進出が増えているが、その中でも異彩を放つのが同店だ。これまでの海外進出といえば、和食やラーメンなど、日本文化を発信するものが中心だったが、メキシコ料理の店を展開する『エルボラーチョ』は、逆輸入ともいえるカタチで、メキシコに出店を果たしたのである。

そのワケを杉山さんに尋ねると、「メキシコには年に何度も行きますが、スタッフを連れて行っても10日程度しか滞在できません」と切り出した。「私はメキシコで2年間を過ごし、料理はもちろん、文化、歴史、人々の温かさに触れたことで、人生が大きく変わりました。スタッフたちにも、せめて1カ月以上はそこに根付いて、働きながらいろんな経験をしてほしいという思いがあって、メキシコのカンクンに出店することを決めました」

2002年に一号店をオープンした『エルボラーチョ』。現在はメキシコや東京でも展開している

今回、話を伺った店主に共通するのは、スタッフのことを心から大切に考え、活躍の場を提供していること。たとえ店主がいなくても、それぞれの店に人が集まり満席状態が続く。楽しそうに働くスタッフたちは自然といい空気を生み出し、そこに人々が集まるのだ。もちろん、味やコストパフォーマンスなど繁盛店となる理由は複数あるが、店主はもちろんスタッフが輝いている店は、常に賑わい活気に満ちている。

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寺脇あゆ子(cadette)

ライター: 寺脇あゆ子(cadette)

福岡・大阪の出版社勤務を経て、福岡を拠点に活動するフリーの編集者・ライター。グルメ情報誌『ソワニエ』やシティ情報ふくおか別冊『福岡肉本』などの地元情報誌のほか、ぐるなびが運営する『dressing』、スイーツ専門の『CAKE.TOKYO』、ウェブマガジン『greenz.jp』などのウェブメディアでも九州・福岡を中心とした情報を発信している。